第16話

 北の霊原から、東の沃野の北端に辿り着くまでに四日。北端と中心地の間あたりの村にある宿で休息を取り、物資の補給をする事二日。そこから南の砂漠の東端に辿り着くまでに、更に四日。

 東の沃野には、テレーゼの実家がある。寄らなくて良いのかとフォルカーに問われたが、何が起こるかわからない今の状況で実家に寄るわけにはいかない。

 十日間の間に、二度ほど十三月の狩人の襲撃があった。以前と比べるとペースが落ちているのはありがたいが、そこで、二人がカミルから渡された光る杖は魔力が尽きてしまう。もう、次は使えない。

 東の沃野に住む魔道具屋に修理を依頼してみたが、これを使えるようにするために魔力を補充するのは、よほど強力な魔力を持つ妖精か魔女、魔法使いでなければ無理だと断られた。これを何度も使うためにはレオノーラの存在が必要不可欠だったのだと、今更ながら思い知らされる。

 歩きながら、二人は今現在の戦力状況と道具を確認する事にした。

 まず持ち物は、携帯食料がいくつか。魔力が尽きてしまった光る杖。カミルの残した地図。そして、北の霊原と東の沃野で少しずつ揃えた、テントなど野営の道具。

 戦力は、フォルカーが剣を使って戦う事ができる。獣人故に力が強く、視力や聴力、嗅覚も良い。夜目も利くし、声も大きい。最後の一つは戦力として考えて良いのかわからないが。

 テレーゼの魔法は、相変わらず威力が小さい。多少強めの魔法も使えなくはないが、それだと数回で何もできなくなってしまう。

 使える魔法は、風を巻き起こしたり、少量の水を出したり、小さな火を熾したり、明かりを灯したり。物を全く違う物に見せる幻視の魔法も使えるが、手のひらサイズの石ころをリスに見えるようにするなど、大掛かりな事はできない。

 果たして、これでカミル達を助ける事はできるのか? そもそも、見付ける事ができるのか?

 様々な不安を抱きながら、テレーゼとフォルカーは南の砂漠に足を踏み入れた。

 氷響月が――一年が終わるまで、あと四日。

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