2-8 出陣
「……よし、西に兵をまわそう。」
“この城の兵は少ない。どちみち援軍の到着前に落ちる。”
“すると……どれだけ早く、落とせるか。”
“そうだ。九戸の伏兵はきっと、南側の川を回ってやってくるだろう。だがあちらは姿を隠せない……。”
“森である分、好都合ですな。”
諸将らは議論を深める。
ここで、信直は立ち上がった。
「私自ら首をとった方が、大殿への働きかけとなろう。政信は北から城の正面へ向かえ。」
“えっ……。では兄上は……。”
“伏兵として、西より城に乗り込む。”
大光寺は慌てて静止した。
「殿自ら……御身がなくば、家督も継げませぬぞ。」
”もしもがございますれば。”
“一度くらい死地をくぐらなければ、大きな成果は得られん。”
信直は周りを睨む。そして大声で叫んだ。
「誰かいるか。私について来るものは。」
為信の決断は早かった。真っ先に手をあげる。ほかに手をあげる者はいない。信直は為信へ近づき、肩を叩く。“よろしく頼む”と言い、その場を後にした。
政信はおろおろとするばかり、大光寺は無言。諸将らは為信に“くれぐれも殿に大事なきように”と励ましをおくった。
……為信は、自陣へ戻る。小笠原は家来衆の末席で、目を瞑って座していた。無の境地とでもいうべきだろうか、手柄を立てることだけが彼の頭の中にあるのだろう。
為信は指示を出す。
「皆々、大浦兵は田子様と共に兵を進めることとなった。早速だが出陣する。」
……為信は大任を仰せ預かった。森岡は小笠原を少し見て、すぐに顔を戻す。
……お飾りの主の元、兵らは我先にと付いていった。
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