第16話 エリスの決意
「カズマとお前がそんなことしてたなんて…
思い起こせば、よくめあねすを私に預け、夫婦で何日も留守にしていたな…。
あれはそのためだったのか?」
「 そうですよ。
誰にも気付かれないように色々と試すには、アクセルに居たんじゃ出来ないですからね。
アイリスに頼んで、王都の近くにある湖を実験場として封鎖して貰ってお借りしていました。
もちろん、神にも気付かれない様に王都最高の結界師に結界を張らせて。」
エリスが合点がいったとばかりに
深くため息を漏らしながら
「それでカエサル湖周辺にいつの日からかずっと消えない霧が……。」
私はそれに微笑みで返事をすると、そのままエリスに言った。
「さぁエリス。どうしますか?」
エリスは嘆息し
しばらく考えているように視線をあちこちに彷徨わせる。
「…女神の私としては……
この状況を護り、保ち続けることが本来の仕事なんですが……。」
私はそう言って俯くエリスを尚も許さない。
きっとカズマなら同じことをするだろう。思わず笑みが漏れる。
「が?
が…なんですか?
はっきりしなさい。
あなたの友人の一人として言わせてもらいますが、あなたのそんなところが、あなたが絶対にアクアには敵わないところですよ。」
エリスは顔を上げて
ダクネスと私を真っ直ぐに見て言った。
「私は、先輩の愛したひとたちを護りたいです…。
そして私も、あなたたちとめあねすを愛しています…。
私も、めあねすに賭けたい……。」
絞り出すようなその告白を聞いて
私は微笑みながら
「ありがとうエリス。
私が生まれ育ったこの世界の女神が、あなたで本当に良かった。
心からあなたを誇りに思います。
私たちに手を、貸して下さいますか?」
そう言って手を伸ばすと
エリスは最上の微笑みで
「先輩にはまだまだ遠く敵いませんが、私の手なんかでよければ喜んで。」
と両手でぎゅっと私の手を握った。
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「それで、エリス様を呼んだ訳は一体なんだ?
まさか本当に酒宴をするためじゃぁないだろう?」
本当になんだか解らないといった風なダクネスが困った顔でそう言ってくる。
「じゃぁそろそろ答え合わせをしましょう。
この15年の答え合わせを。
私たちの世界に何が起こったのかを。」
ダクネスが息をのむ。
「私から、で良いですよね?エリス?」
エリスはゆっくりと大きく頷く。
「じゃぁお話ししますね。
ダクネスには記憶が…
断片すら記憶は残っていないのですか?」
ダクネスはそれにふるふると首を振る。
「分かりました。じゃぁ15年前の最後の戦い―魔王の娘率いる魔王軍との戦いから辺りからお話ししましょうか。」
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