第15話 めぐみんダクネスエリス
「なっ…なっ…なっ…何てことを……」
目の前に少しずつ具現化する女神の姿に、ダクネスが驚愕し畏れおののく。
やがて完全にその姿を現したこの世界の女神は、哀しげな微笑みでダクネスと私を見つめて口を開いた。
「ごめんなさい…。めぐみんさん。ダクネス。本当に……ごめんなさい」
****************
ダクネスが畏まり
膝まつき、頭を垂れる。
それをエリスが制し
「ダクネス。お久しぶりです。あなたのことはいつもいつも見ていましたよ…。毎日毎日私に祈りを…。いつもめあねすのことやカズマさんのことやめぐみんさんのことをお祈りして……自分のことを少しは考えて欲しいっていつも思っていたんですよ?」
「そんな!勿体ない御言葉でございますエリス様!私めの様な半端者にそうやって寵愛を賜りまして、非常に勿体ない限りでございます」
さらに畏まり固まるダクネスに
「あぁぁ。もぅどうしたら…」
とこちらを見てくるエリスに私は眉も動かすことなく言う。
「とりあえず、こちらに座ったらどうですか? さぁ。ダクネスも。三人で飲みましょう」
というと
エリスがこちらに小さく礼をした。
****************
「まずエリス。あなたはお酒は飲めるのですか? 飲んでも大丈夫なのですか?一応お聞きしますが…」
私の向かいにエリスを座らせ
その隣にカチコチダクネスを座らせて一応聞いてやった。
宗教上にも、女神的にも、一般人と飲むのは許されるのかどうか。
「わ 私にも分かりません……ですが、主神様が見ておられるはずですので、何もおっしゃらないということは、許されてるのかと…」
「ならよいですね。私たちと同じシェリーでいいですか?確かあなたもお好きでしたよね?」
「はい。いただきます…」
恐縮するエリスにもグラスを渡してやる。
「め めぐみん。何なんだこの状況は…?説明してくれ。なんでエリス教徒じゃないお前がエリス様を名指しで下界に呼んで……いやいやいや、それもおかしいな?
第一、エリス様が何で人間なんかに呼びつけられてるんだ?…いやいや、呼べるんだ??めぐみんはなんだ?何でエリス様と私たちが一緒に酒宴をしてるんだ??……あ、頭が混乱して何言ってるのか分からなくなってきた……」
と言ってダクネスが頭を抱えた。
「そこまで恐縮しなくても良いですよダクネス。エリスは女神ですけど、カズマの友人でもあり、アクアの後輩でもあるのですから」
「いや。だってお前……エリス様は私の信仰する神だぞ!? 幼い頃から毎日毎日礼拝も欠かさずしている。その神と同席して酒宴だと…?」
それを見ていたエリスがたまらずダクネスの肩に手を置き
「大丈夫ですダクネス。めぐみんさんのおっしゃられた通り、私はカズマさんの友人ですし、アクア先輩には本当にお世話になってきた後輩なんですよ?それに…」
エリスが言い淀む
が、私はもうそれを許さない。
「もういいでしょうエリス? 私の親友を赦して下さい。すべてを話しましょう。
それとも、あれだけの目に遇ったダクネスに嘘をつき続けて、あなたは平気ですか?
ダクネスは私の愛する家族ですが、あなたの親友でもあるのではなかったのですか?
私は昔から神が嫌いです。
ですが、カズマが信じ、ダクネスが愛し、アクアが心を許していたあなたを、私は信じます。私は私の親友を護ります。この私の愛する家族たちを護ります。その為なら、神をも焼きつくしてみせます。私はあなたを嫌いになりたくないのです」
その言葉にエリスは深く嘆息し
「……実は魔王より何よりも一番主神が危険視していたのはあなたなのですよ?めぐみんさん。……あなたとカズマさんの生み出した爆焔魔法は、もうすでにこの世界のどの火力をも超えてしまいました。あの神の怒りですら、あなたの魔法の前ではなすすべもなくねじ伏せられてしまうでしょう。その絶対的熱量は、カズマさんの世界の核爆弾という破壊兵器30発分の熱量だそうです。主神がため息混じりに教えてくれましたけど…。それに…めぐみんさん?……あれだけではないんですよね…?」
おそるおそるといった感じでエリスが聞いてくる。
「えぇ。違います。カズマと私が生み出した爆焔魔法はまだあと3種類存在します。
そして、それらはすべて究極の形ではありません。めあねすに渡して初めて私たちの爆焔魔法は究極型として完成するのです。これは愛するめあねすに贈るための大切なもの…。
…めあねすがいつか愛するものを絶対的な力で護り抜けるように。私たちのようにならないように……。カズマと私が遺してやれる最大の愛のかたちなのです」
二人は息をのみ声を失う。
「でも、完成形ではありませんが、神を滅ぼすくらいは簡単です」
私がそう言って笑いながらエリスにウィンクすると、エリスは
「それはお許し下さい!!」
と慌てて両手をバタバタと振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます