第150話 出来レース
女王陛下
実を言うと、半分くらいの人達は退席してしまうのでは?とも考えていた。この国での陛下への評判を考えたらそれでもおかしくなかったからだ。なので思ったよりも退席者が少なかった事に正直なところちょっとほっとはしていた。
「さて、少し脱線してしまいましたが我々の計画説明は以上です。詳細な手数料やその他の契約については契約交渉にて取り決めたいと思っています。皆様のご協力を何卒よろしくお願いします。ご協力頂ける方はダリオさんまで1週間以内にお返事いただければと思います」
とりあえず終わった!後はどれだけの人が協力してくれるかだ。
「おう、契約するぜ」
「・・・え?」
俺は突然の事に、一体何を言われたのかを理解する事が出来なかった。今契約するって言わなかった?まさか聞き間違いだよな?ジョーダンキツイデスヨーHAHAHA。
「え?・・・じゃねーよ。お前さんの所と契約するつってんだよ」
「ええ!?いやだって、今話したばかりですよ!?早すぎません!?」
某IT企業の社長もびっくりのスピード決断だよ!その判断で大丈夫か?
俺がそんな事を考えながらどうしよう?とか考えていると、何と次から次へと契約の意思表明をするオーナー達が現れた。
「おう、俺も契約するわ」
「じゃあ俺もすっかな」
え?えーーー!ど、どうなってんのこの状況?
「おいユリアーナ、お前さんコレナガに言ってなかったのか?」
俺が突然の参加表明ラッシュにビビっていると、ダリオがユリアーナにそう言っていた。
「へ?ユリアーナ?何を俺に言ってないって?え?」
もう俺の頭の中は大混乱だ。一体何がどうなってるんだ・・・。
「いやあ、シンちゃんに言っちゃうと、絶対顔に出ると思って何にも話してないんだよねー」
さっきまでキリッとした表情で立っていたユリアーナが、首とか肩を回しながらダリオにそう回答していた。
「あの、ユリアーナさん、一体何を僕に言って無いんですかね?」
いやもうマジでわからん。なんで今の話だけで急に契約する皆とか言い出したんだ?え?まさかユリアーナが裏で取引とかしてたのか?
「いや実はさあ、今いるオーナーさん達って女王陛下派?っていうのかな。とにかく歴代の王様にずっとお世話になってる人達ばかりなんだって」
「え?ホントに?」
「ホントホント。とは言え、全員が全員そういうわけではないから、一応形だけでも説明会を開くことにしたんだって。「勝手に女王派だけを優遇した」とか言われないためにね」
「そうだったんですか・・・。それならそうと事前に話しておいて下さいよ。おかげで下着まで汗でぐしょぐしょですよ!」
そうだよ!前もって言ってくれればあんな変な緊張とかせずに済んだのに!あ!それでか!
「だからあなた、前日にも関わらずルーナさんの部屋で夜更かししたりと余裕だったんですね!?」
「イエーイ、その通り」
ユリアーナはまるで日本人のようにピースサインをしながらお気楽な返事をしてきた。この日本オタクめ!
「と言うか、おめえなんでコレナガに今日の事伝えてなかったんだ?」
ダリオが不思議そうにユリアーナに質問していた。そうだよ!なんで事前に俺に伝えてないんだ?意味が分からないんだけど!
「えー、だってシンちゃんに伝えたら絶対
うっ・・・。
「これ絶対失敗出来ないんだよ?だったら最善策を取るの当たり前じゃない」
等と、さも当たり前のようにユリアーナは俺にそう言ってくる。いや、なんか釈然としねえ・・・。それじゃあまるで俺が知ってたら失敗するみたいじゃないか。そして俺が露骨に不満顔をしていると。
「なるほど、こいつはちょっと圧に弱そうだからな。その判断は懸命だったかもな」
「ほらー!絶対そうよね!」
「・・・」
ダリオが完全にユリアーナに同調していた。いや、お前らいつの間にそんなに仲良くなったんだよ・・・。
「という事は、急にエレオノーレさんじゃなくあなたに変更になったのも、何か関係があるんですか?」
今朝急に言われたんだよ。エレオノーレじゃなくて私が行くから~ってユリアーナに。こいつが寝坊したもんだから理由も聞けなかったんだよな。
「ああ、それはね。単に私が面白そうだと思ったので、エレオノーレに代わってもらったの」
・・・。
「ふざけんなー!さっき絶対失敗できないとか言ってたのはどの口ですか!あなたの方が余程不真面目じゃないですか!」
「はあ!?本来そのくらいの心の余裕が無いとダメなのに、毎回毎回ギリギリなのそっちじゃない!大体さっきだってちょっと怒鳴られたら真っ青になってたくせにー!」
「そ、そんなの関係ないでしょー!真面目のどこがいけないんですかどこ・・・うをっぷ!」
俺がユリアーナに反論していたら、突然頭を手で押さえられていた。よく見るとダリオが間に入って、唾がかかるくらいの距離で言い争っていた俺とユリアーナを強引に引きはがしたようだ。ユリアーナは何かをモガモガと言っているが、ダリオの手でふさがれていて何を言っているのか全く分からない。
「お前らその辺にしとけ。こいつらのいい見せもんになってるぞ」
ダリオの言葉をきいて周囲を見ると、オーナー達が「いいぞもっとやれー!」とか「兄ちゃん押されてるぞ!」とか口々に叫んでいた。これははずい・・・。
「まあとにかく、ここにいる連中は国王陛下には代々お世話になってきた連中ばかりなんだ。俺達は喜んで協力させてもらう」
俺とユリアーナの間に割って入ったままダリオが宣言した。
「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」
俺はダリオに頭を掴まれたままそう返事をした。うわー、超かっこわりー・・・。ユリアーナの方はダリオの手から脱出し、今はぐしゃぐしゃになった髪を一生懸命手ぐしで整えていた。
とりあえず今日の会合は終了し、今後の細かな契約に関しては日を改めて行う事となった。
そして俺は帰りの馬車の中で、今日の出来事について思い返していた。
今日の会合は、すでに結論は出ていた会合だった。もちろん陛下に協力するという結論だ。しかしオーナーの中には反対派も出ることは予想され、彼らを勝手に排除した・・・という印象を与えない為に、わざわざ俺達を呼んで説明をさせた。
俺の名演技・・・もあって、反対派のオーナー達は、まさかこれが出来レースだとは思いもしない事だろう。そこまでしなきゃいけないのかと、改めてこの国の異常さも痛感させられたけどな。
それにしても驚いたのは、結構な数の人達が隠れ女王派だった事だ。あのろくでも無い事をしてくれたおじいちゃん王でさえ
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