第93話 アルターラ到着
「なーにシリアスな顔してんのよっ!」
ボフッ!
「いたた・・・」
どうもユリアーナが、考え事をしていた俺に枕を投げつけて来たらしい。
「ちょっと、痛いじゃないですか・・・」
「5年か・・・とか、かっこつけちゃって!」
ぎゃあああああああ!さっきの聞かれてたああああああああ!
「べ、別にカッコつけていたわけじゃありません!真面目に考え事をですね・・・」
「真面目に後ろ向きな事を?」
「またそれ!?」
「だってシンちゃんが真面目な顔してる時って大体そうじゃん」
うぐっ!思い当たる節がありすぎて反論できねえ。
「それよりもですね、明日も早いんだからもう寝ちゃいましょう」
俺は自分にとって不毛なこの展開を収束すべく、今日はもう眠りにつくことを提案した。
「えーつまんなーい」
「つまんないじゃありません!はいはいもう寝ますからね!」
ブーブー言っているユリアーナをしり目に、おれはパンパンと手を叩きながらさっさと自分のベッドに潜り込んだ。
「シンちゃん、私達のベッドに潜り込んだりしないでね」
「しませんよ失敬な」
「なんでよ!そこはラノベ的に言えば来るとこでしょ!」
「なんで僕は怒られてるんですかね!?」
もう中途半端にラノベとか知ってるもんだからやりにくい!お前はファンタジー世界の生き物だろうがっ!
とにかく明日も早いので、今日はもうユリアーナを無視して俺はとっとと寝ることにした。
次の日、俺達は午前のアルターラ行きの馬車に乗り込んだ。午前中に出れば、夕方前にはアルターラの街に着くそうだ。
以前聞いたんだが、アルターラの街はフォレスタ王国の中でも3番目に大きい町らしい。とはいえ、上位二つの街とはかなり開きがあるみたいなんだがな。
それでも人の多さはグリーンヒルよりも多いわけで、もしかしたらティルデ達の目撃情報なんかも聞けるかもしれない。グリーンヒルではそういった話は一切聞けなかったもんなあ。
まあリバーランドとも近いし、そんな所に滞在できるわけが無いかもな。なので、リバーランドから距離のあるアルターラではしっかり入念に調査をしたいと思っている。
そういうわけでアルターラに付いたら、まずはサランドラ商会のアルターラ支部へ顔を出すことになっている。
しばらくはアルターラに滞在するかもしれないという事で、サランドラ商会所有の部屋を借りる事になったんだ。しかも格安で。
この辺りはフィリッポさんが交渉してくれたらしい。なんでもアルターラ営業所に知り合いがいるとかで、便宜を図ってくれるんだとか。
会社の方も、あのグリーンヒルで短期間で11台もプレートを販売した実績を無視も出来ず、提案にOKが出たようだ。
まあたぶん、なんらかの見返りは求められる予感はあるんだが・・・。なんせ国内でも最大手の商会だしな。親切心でってことは絶対無いだろう。
そして俺達は、滝が近くにある美味しいと評判の魚屋で川魚を焼いてもらって、そこでお昼ご飯にした。評判に違わずめちゃくちゃ美味い魚だった。
リバーランドほどでは無いが、この国も川は多いらしい。そういえば、釣りとかした事ないな。今度やってみるかな。
◇◆◇◆◇◆◇
「おー、久しぶりに来たけど、やっぱりこの街は活気があるね!」
アルターラの街並みを見て、ユリアーナがはしゃぎながらそう話す。俺達3人は、ついさっきアルターラの街に着いたばかりだ。
「お二人はこの街へ来たことが?」
「はい。以前はユリアーナとアリサと私の3人で来たんですよ。その時はかなりの長期滞在でしたね」
俺の問いに、ユリアーナではなくエレオノーレさんが答えてくれた。
まあでもユリアーナじゃないが、彼女がはしゃぐ気持ちもわからないでも無いな。
どちらかと言うと閑静な住宅街と言った感じのグリーンヒルと違い、こちらはずらりと屋台が並んでいて、いかにも活気がある!といった雰囲気の街並みだった。
エレオノーレさんによれば、昼間は商会などが立ち並ぶ、まあ日本で言う所のビジネス街みたいな場所らしいが、夕方から夜にかけてはこうやって屋台で埋め尽くされ、仕事帰りの人達が一杯ひっかけていくような場所に変わるらしい。
なるほど。よく見ると、屋台の後ろの建物になんちゃら商会とか書いてる。
「ねえねえシンちゃん、あそこの屋台で出してる鳥の甘辛焼きみたいなの美味しそうじゃない!?」
彼女の指さす方向へ目を向ける。屋台では、良い感じに焼けている鳥肉が並んでいた。なるほど、あれは確かに美味そうだ。
「サランドラ商会へ顔を出して、宿が決まったら行ってみましょうか?」
「わーい」
俺の言葉にユリアーナは小躍りしながら「やっきとり♪」とか歌っている。あれは焼き鳥とは違う気がするが、まあそれはいいか。というか、結構歌うの上手いな。そういえばこの人音楽家だったな。すっかり忘れてたよ。
それはともかく、早速サランドラ商会アルターラ支部へ向かうとしよう。何をするにもまずは落ち着ける場所が欲しいしな。
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