メザシを食って、俺は踊った

作者 架月天声

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★★★ Excellent!!!

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私たちの日常の行為や思考のすきまからは、ふいに気づくと根源的な「なぜ?」が吹き付けてきます。たいていの場合、「考えても結論なんて出ない」なんてありきたりな結論をもってなかったことにしたり、あるいは乱雑に「真理!」と書きつけたガムテープでその隙間をふさいでしまいます。
けれども、そういったやり方の違和感に目を凝らしてしまうと、途端に世界は古かったり新しかったりするガムテープだらけのつぎはぎで、その瞳に映り込む姿は、時にめまいを引き起こしてしまうほどにいびつで不快なものです。
この私小説の語り手は、すきま風が来た方へ、けれども一直線に向かっていくのではなくて、まるで迂回するかの如く「歩いて」いるように感じます。歩くというのはなにも足を交互に前に出すその行為だけじゃなくて、日々の行いや考え、そのすべてがなんらかの微細な運動を伴っているという意味での「歩く」です。習慣化していく行為さえそれ自体に根源的な意味を与えてしまえば、途端にガムテープの裏側みたいなべたべたとした粘着が自分にへばり付く。そんなことを思っているからか、この文章にはどこか旅の丸寝の軽さを感じます。それは「耐えられない軽さ」ではないし、重力圏を抜けて彼方へと旅立つ軽さでもない。だからこそ語り手は、この日本の、東京の、江古田のありふれた日常の中を歩いて行くのでしょう。

やや余談的ですが、江古田(えこだ)というのがいいですね。と言っても僕はせいぜい「鳥の焼き肉屋」くらいしか知らないので偉そうな顔できないのですが、すくなくともこの文体は渋谷でも自由が丘でも銀座でも神田でも上野でも、ましてや深川でもしっくりこない気がします。
「10月31日までの日記」と書いてあるから、おそらくあと半年以上連載が続くということで、本当に楽しみで仕方ありません。願わくばより多くの人がこの日記を読んでくれますように!!