0null8acht/15fünfzehn

由海

08/15(Nullachtfünfzehn)

 カタカナ読みだと、ヌル・アハト・フュンフツェーン。

 ドイツ語で数を数える際、数字を逆に読み上げるような錯覚に陥るため「ややこしくて、難しい」と感じる学習者も多いとか。

 


 『08/15』はドイツの作家キルストの代表作となった長編小説だ。

 元ドイツ国防軍将校のハンス・ヘルムート・キルスト(Hans Hellmut Kirst)によって1954年に書かれたこの小説は、第二次世界大戦の東部戦線を舞台に、ナチス・ドイツ国防軍陸軍兵士達の敗戦前後の日々と苦難を描いた三部作で、大戦後のドイツで絶大な人気を博し、24か国で翻訳され、映画化もされた世界的ベストセラーである。


 実は、表題として使われた「08/15」は、ドイツ語では「月並みな」「特別でない」「凡庸な」と言う意味のある、軽蔑を含んだ慣用語でもある。 


 使用例: 考えに考え抜いた原案を、恐る恐る提出するあなたに向けて。

 

 ”Deine Idee ist 08/15.” (君のアイデア、大したことないね)



  この語源となったのが、第一次世界大戦の塹壕ざんごう戦で敵を膠着こうちゃく状態に陥れたドイツ帝国陸軍が誇る大型機関銃「MG08」の改良版「MG08/15 」だ。地上部隊の主力機関銃であったと同時に、戦闘機用の機関銃としても幅広く使われていた。

 『飛べねえ豚は……』のセリフで有名なアニメや、シューティングゲームの世界で登場することも多い機関銃との事で、ご存知の方も少なくないのでは。


 第二次世界大戦では新式の機関銃が開発された。旧式となったMG08/15 の愛称だった「08/15 」は「特別でないもの」「ありきたりなもの」を示す軍隊俗語となり、現在では「大したことないじゃない」「なんだ、つまらない」と思う事に対して、間接的に揶揄やゆする際、日常的に使われる表現の一つとなっている。



 もう一つ、こんな意味もある。


 「時代遅れの」


 キルストはどんな思いを込めてこの表題を選んだのか。 





――今の時代、そんなもの、流行らないよ。ややこしい上に、古臭いし。

 

 それでも良いじゃない、と私は微笑む。

 心の中に広がる世界は、「月並み」ではない、とても「特別な」ものだから。

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