第24話 天才の年齢


「本当は聞かなくてもいいんだけど……クレアちゃん、種族はなに?」

「種族? 人間だと思うけれど?」

「だよね。んー、この情報で入れるけど、間違っていたら罰金をとてもたくさん取られるよ? いいの?」


 リリアが心配そうに見てくる。

 そう言われても、私には17年間過ごしてきたという確証がある。


「じゃあ、あなたたちが思う年齢を入れて、私が17歳だったらどうするのよ」

「あー、その場合は……」


「「俺たちが払う!!」」


 野次馬たちが口をそろえて言った。

 なんだか知らぬ間に、賭け事も始まっているようだ。


「オレは12歳だと思うね」

「いいや、10歳だ!」

「馬鹿言え、あんなに落ち着いているんだ。15は超えているだろう」


 わっちゃわっちゃと騒いでいる野次馬たち。


 ――おい、12歳だの10歳だの言ったやつら出てこい。〆てやる。


「よし、それじゃ罰金を支払ってくれるって言っているし。とりあえずあいつらが決めた歳で申請するか」


 ディアナの案で特に異論はないので、素直にうなづく。

 わーわー騒いでいる野次馬たちをチラリと見た。まだ時間がかかりそうだ。

 その間は暇なので、いろいろと質問することにする。


「ねぇ、ところで冒険者ってどんなものなのかしら?」

「へっ? あ、ああ。そっか、今のうちに説明するね。ギルドにはランクがあるの。これはどのギルドも同じだけど、ギルドへの貢献度でランクが上がっていくんだ。その貢献度は依頼を受けて、完遂させるともらえるんだよ。依頼はギルドボードに貼ってあるから、後で見といてね」

「依頼を受けてない場合で、貢献度を稼ぐことも可能かしら?」

「ええ、もちろんできるよ。その代わり、貰える貢献度も少ないし、間違って保護しなければいけないモンスターや薬草を取ってくると、罰金と貢献度が引かれるから基本は依頼を受けてからかな」


 なるほど、保護対象もいるのか。


「字を覚えて、本を読みたいのだけれど、本がいっぱいあるところとか知らないかしら?」

「本を? そうだね、王都になら図書院があるけれど、ここだと……んー、本屋か古本屋、魔道具屋にならあるかな」


「そうなのね。じゃあ――」


「14歳で決まったぞーっ!!」


 もう一つ質問したかったのに。遮られてしまった。


「はいはい、14歳っと。クレアちゃん、これで大丈夫?」

「罰金を支払ってくれるのならば、何も問題はないわね……」


 心の傷は別にして。


 ――ねぇ、知ってる? 天才でも傷つくんだぞ?


「それなら、ここに手をついてくれないかな? 個人認証、つまりクレアちゃんのものだって登録をするから」

「わざわざ言い直さなくて大丈夫よ。ここでいいのね?」


 言われた通りに板に手を置く。

 いくらか魔力を吸われた。


「あー……。うん、14歳ではないみたいだね」


 リリアが何かを操作して、そう言う。

 野次馬の多くが崩れ落ちた。


「よっし、それじゃ次は12歳だ!!」


 次点が12歳だったのだろう。男の一人が叫んだ。

 しかし、私はそれを許さない。


「次は17で入れてちょうだい」


「なんでぇ!?」

「私が17歳だからよ」


 にべなく言う。


「はいはい、入力っと。クレアちゃん、もう一度手を置いてくれる?」

「わかったわ」


 板に触れると、また魔力を吸われた。

 リリアが同じく操作する。すぐに結果が出たのだろう。


 彼女は勢いよく顔を上げた。


「……本当に17歳だ」

「言ったでしょう、17だって。まったく……罰金は約束通り、彼らが払うから」


 くいっと顎で野次馬たちを示す。


 彼らは全員床に崩れ落ちていた。


 ――って、誰ひとりとして17歳には賭けなかったのかよ!


 釈然としないこの気持ちは誰にぶつければいいのだろうか。

 もう一度ため息を吐いた。

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