第1章 天才と武闘大会
第22話 天才とアペンダーテ
フードを深くかぶり直しながら、周りをうかがう。
人と物が溢れていた。真新しいものばかりで、ワクワクする。
「ここが、ここがアペンダーテねっ!」
地下ダンジョンがある町、アペンダーテにようやく着いたのだった。
とりあえず、冒険者ギルドへ行こう。
田舎者の設定だが、田舎者ではないのでスイスイと人の間を縫って進んでいく。
ここは識字率の低いところなのだろうか。
看板は文字で示すものではなく、絵が描いてあった。
「すみません、これ一つくださいな。それと、冒険者ギルドと薬学ギルドはどこにあるのかしら?」
見たことのない素材が陳列してあったので、もちろん買う。
それと同時に情報収集も行った。
「いらっしゃい、嬢ちゃん。冒険者ギルドはこの町で一番高い屋根の建物だ。薬学ギルドはその近くに建ってるぜ。――ほれ、10ギルだ」
「そうなのね、助かったわ。――あら、情報代も入れて10ギル? 高くないかしら。どう見ても5ギルでしょう」
「馬鹿言え、そんなに安いもんか。……8ギルだ」
「それでも十分に高いけれど……まぁ、この町に来て初めての店だからそれで買ってあげるわ。――感謝なさい」
懐からぴったり8ギルを取り出して、店主に渡す。
店主から素材を受け取った。
「おう、また来いよ」
「ぼったくらないのならば、来てあげてもいいわ」
ヒラヒラと手を振ってその場を後にする。
一番高い建物……あれか。
行く場所が定まれば、あとはそこに近づくだけだ。
心に余裕ができたからなのか、人々の様子も目に入るようになった。
――まず、種族が多い。
生まれ育った世界には、人種は人間のみだった。だから、天才の頭脳をもってしても、まさか人間以外の種族がいるだなんて想像してもいなかった。
だから初めて見たとき――村から出て最初の町であるグルリアの町で“それ”を見たときは、モンスターだと思って杖を構えようとしたものだ。
……まあ、攻撃用の杖は持ってないのだけれどね。
“それ”とは、いわゆる獣人という者たちであった。
耳は人間のものではない。いわゆるケモミミで、尻尾もある。
人間そのままの顔だちの者もいれば、獣よりの顔の者もいた。手足も両者に分かれる。
未知の存在すぎて思わずジッと観察していたら、彼らに気づかれ絡まれた。
といっても、おしゃべりしただけだが。
これ幸いと質問しまくった。失礼な質問もあっただろうに、彼らは全てに答えてくれた。気のいい兄ちゃんたちだった。
グルリアの町で長居するつもりはなかったのだが、話が弾んで結局一泊してしまった。
そんなグルリアの町で出会った兄ちゃんたちと同じ種族に見える人たちもいれば、違う種族なのだろうと推測できる人たちもいた。
だが、みな同様に堂々と歩いており、周りも騒がないのできっとこれが通常の光景なのだろう。
――次に、そんな彼らを含めてだが、みな服装が独特だった。
おそらく冒険者なのだろう。一様に武器を身に着けており、体もしっかりとしていた。
そうでない者も杖などを手に持っており、戦闘可能状態を維持していた。
その冒険者であろうと思われる彼らは、服装が面白い。一部しか防具をつけていない者もいれば、全身を覆い尽くしている者もいる。それどころか、肌を隠す気はあるのか、と問いただしたくなるような服装の者もいた。
なるほど、これなら私の服装も埋もれるというものだ。
装飾品を隠す必要がなければ、マントなぞ必要ないようである。
――最後に。心配していた能力値だが、みな私より弱かった。
適当に鑑定をして、人様の能力を確認していく。
強そうに見えるもの、弱そうなもの、男、女、子どもか老人かに関わらず、見ていく。
たまたまかもしれないが、脅威になるような人はいなかった。
この町で冒険者風に見える者たちならば、きっとダンジョンにも入っているだろう。防具に真新しい傷跡が付いている者はほぼ確実だと踏んでいる。
その者たちよりも強いのだから、私もダンジョンに入れるのではないだろうか。
あとはその実力を示すだけ。
ウッキウキしながら、冒険者ギルドへと急いだ。
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