第16話 天才と女子会
次の日から調合ラッシュだ。
場所は依然、村長の家を借りている。
病気の者を最初に治していく。
野次馬も増えた。
一人、また一人と完治していくたびに、彼らは大いに喜ぶ。
最初はほほえましく思っていたが、こう何度も騒がれるとめんどくさくなってしまうものだ。
――特に私、引きこもりだから。騒がしいのは苦手だし。
だんだんと冷めた目で彼らを見ていると、それに気づいたのかリアを含む女性陣が野次馬を追い出してくれる。
「はいはい、病人もいるんだから静かにね」
「アンタら、煩いよ。外でやりな」
不満を言う野次馬たちをひと睨みで黙らせると、穏やかな顔で私に向き直った。
奥さん強いね。
「クレア様、すみませんねぇ。お疲れでしょう? お茶にしませんか?」
「そうね。いただくわ」
大きく伸びをする。
何日も釜を混ぜ続ける日々をおくっていたので、これくらいなんてことないと思っていたが、意外にも気を張っていたようだ。
お茶を淹れてもらっている間、気分転換に隣の部屋に届けられたという素材たちを見に行く。
「……すごい量ね!」
思わず笑みがこぼれた。
「喜んでもらえたのならよかった! クレアちゃんに治してもらった人とか、その家族や友人とかがお礼にって届けてくれたんだ。全部クレアちゃんのものだよ」
私に負けず劣らずの笑顔で、リアがそう告げる。
――全て私の物。
じゅるり。これは鑑定しがいがありそうだ。
さっそく、雑多に置いてある物たちを片っ端から鑑定していく。
そして自分基準で分類して並べ直す。あぁ、なんて楽しいのだろうか。
基本は作物が多かった。
お礼として差し出されているのだから、そこらの雑草は贈れないと思ったのだろう。
雑草でもいいのに。むしろ被らない方が、種類を把握できるという点ではありがたいのに。
特性と分類、その素材の能力を見て覚えていく。
元の世界にある素材と照らし合わせ、合致させる。
ふむふむ、なるほど。
分類の傾向としては、元の世界と似ているようだ。ありがたい。
「クレアちゃん、楽しそうなところ悪いけど、休憩になってないよ。ご飯も出来たし、休もう?」
ハッ、いけないいけない。つい夢中になってしまった。
「ごめんね、リアお姉さん。嬉しくって。ご飯とても楽しみだわ」
「うん。力作ばかりだから、たくさん食べてね!」
女性ばかりとなった部屋で、食事を食べる。
ちなみに村長はこの場にいない。他のお仕事があるようだ。
食事中、最初は錬金術の素晴らしさをみなが語っていたが、次第に話題がアサシンのことへと移った。
「昨日の男性、クレア様のイイ人かい?」
「私たちが怖がるからって姿を見せなかったらしいけど、それほど怖くは感じなかったよ」
「確かにねぇ。全身が黒色だったのと、服が変わっていたからビックリはしたけどさ」
「それにしても言葉が不自由なのかね。一言もしゃべらずいなくなったねぇ」
「怖いというよりも、不思議な人って感じが強いわねぇ」
彼女たちは思い思いに、アサシンの印象を語っていく。
詳しく聞きたいことがあったが、まずは間違った認識を改めてもらおう。
「彼はアサシンと言って、私のお兄ちゃんのような存在なのよ。イイ人ではないわ」
そう言うと、コイバナに飢えている女性たちは、大きく落胆した。
残念ながらネタは提供してあげれそうにない。
「それにしても、私たちの格好ってやっぱり変かしら?」
彼女らはアサシンの服を“変わっている”と言った。
確かに彼の服と、この村の男たちの服は大きく違う。もちろん、必要としている効果が違うのでしょうがないのだが。
私は自分の服を見る。
黒と銀色を基調としたゴスロリ服を着ていた。もちろん、ニーハイである。
そこに多くの装飾品を身に着けているので、ゴテゴテ感がすごい。
質素で洗濯のしやすさを追求したような服に囲まれていると、浮いて見えた。
――でもしょうがないじゃないか、最高品質の調合するのにこの組み合わせが一番良かったのだ。いくら私が天才であろうとも、これは
誰ともなしに、心の中で言い訳をする。
「いえいえ、変ではないですよ!」
皆が一斉に否定した。
しかし否定もするだろう。たくさんの村民を救ったのだ。気も使うはずである。
私は落ち込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます