第43話

「僕が一人で……、いや、この四人でオークの巣を全滅させたって報告したら信じてもらえるかな?」


 オークの数は尋常ではなかった。

 そんな数を僕たちだけで倒したと言って大丈夫なのだろうかということが気になったのだ。


「む〜……」

 僕の言葉を聞いて腕組みして考え込むエイリーン。


「それは……ッ!」

 リリアンナもハッとした表情で言葉を詰まらせる。


「ご主人様はすごいですわん!」

 ひしっと僕の腕にしがみついてくるコロ。


 重い沈黙が支配する中、エイリーンが口を開く。



「討伐部位は焼失したけどオークの残骸は散見できるからオークの巣にいた個体が全滅したっていうことは信じてもらえると思う……、だけど……」


 じっくり考えて言葉を選びながら話すエイリーン。


「だけど?」


「こんな初心者パーティ四人で倒したっていうことは信じてもらえないだろうね〜。むしろ誰かの手柄を横取りしようとしていると勘ぐられる可能性まであるかも〜」


「……やっぱり」


 エイリーンの推測は僕のものと大体一致してしまった。

 やはりこんな初心者集団が出来るとは信じてもらえず、むしろ悪さをしているのではと疑われる危険まであるという事だ。僕が逆の立場だったとしても疑っちゃうだろう。


 初心者に毛が生えたような冒険者が一人で大量のモンスターを倒したと聞けば誰だってそうだ。


「だ、だが倒したのはソルトです! 私が証明します!」

「コロも!」

 エイリーンの話を聞いたリリアンナとコロが声を上げる。


「二人ともありがとう。でも、同じパーティメンバーでそんな事を言っても無駄だと思うよ。でも気持ちはすごく嬉しいよ」

 二人の気持ちは嬉しいがそんな事をしても効果は期待できないだろう。


「た、確かに……」

「コロ見ましたっ」

 うなだれるリリアンナとそれでも頑張るコロ。


「全滅させたんだし、これ以上被害が出るわけじゃないから報告しないってのも手だね〜」

 腕組みしながらエイリーンが重い口調でそんな事を言う。


「そ、そんな!」

「倒したわん!」

 リリアンナとコロはエイリーンの提案が納得できないようでうろたえてしまう。


「ふむ……、オークの巣がこの辺りにあることは普通なんですか? 後、一度にこんなに大量に倒して他のモンスターなんかに影響が出たりはしないのですか?」

 僕も腕組みしながら報告しなかった場合の事を考えながらエイリーンに質問をぶつける。



「モンスターの巣くらいならちょくちょくあるし、ここが取り立てて異常ということはないね〜。強いモンスターが倒されてそれに食べられてた弱いモンスターが大量繁殖することもあるけどオークは弱い部類に入るからもし何かが増えたとしても弱いモンスターかな〜。あ、でもオークを主食にするような大きなモンスターがいたら飢えて暴れるかもしれないか……」


「オークだけを狙って食べるモンスターとかいますか?」


「それはないかな〜。う〜ん、そう考えると大丈夫かも。強いモンスターは総じて数も少ないしね。報告しなくてもだいじょーぶ。あとは山火事に発展しないようにしっかり消火しておけば問題ないかな〜」


「ふむ……。なら、オークを狩ろうと探索中にこの場を発見したと報告だけしましょうか。その報告、エイリーンにお願いしてもいいですか? 僕達よりギルドで働いているエイリーンの方が話も信じてもらえると思うし」


 色々考えた末、たまたまこの場を発見したと報告してはどうかと提案する。



 これなら放置するわけでもないし、僕達が倒した事にもならない。

 オークの集団がいたことと全滅したことも伝えられるし一番いい方法ではないだろうか。



「そうだね〜。万が一ってこともあるしそうしよっか〜。任せて、うまく話しておくよ〜」

 エイリーンは僕の意図を察して了承してくれる。


「ありがとう」

 僕はエイリーンが快諾してくれたことに笑顔でお礼を言った。


「むぅ、少し悔やまれますね」

「ガッポリだったわん?」

 まだ未練が残るリリアンナとコロはちょっと不満げだ。


「まあ仕方ないよ。大体はじめからこんな事する予定じゃなかったしね。今日は失敗しちゃったけど明日はうまく狩りをしようよ!」

 そんな二人を説得する。


 本当はパーティでの依頼をこなす練習のはずだったんだし予定外のことだったんだから諦めるのもさほど難しくないはず。



「そうですね。切り替えは大事です!」

「がんばりますっ」

「怪我がなかったのが一番一番〜」


 僕の言葉を聞いて三人も気持ちを切り替えてくれたようだった。


 ずっと未練を残すと次の行動に影響が出るかもしれないしこれが一番だ。

 帰ったらご馳走でも食べて気分転換すればいい。

 塩を一杯かけて一杯食べれば気持ちもスッキリするだろう。


「ですね! じゃあ、帰ろう!」

 僕はみんなに頷きかけ、腕を掲げた。


「「「おー!」」」

 僕の言葉にみんなも腕を掲げて返してくれる。



 と、帰宅ムードが高まる中、突然大声が辺りに響いた――



「そこのワッパ共待つのじゃーーッッ!」





 突如、僕たちを制止する声とともに小さな女の子が眼前にずざざーっとスライディングしてきた。


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