第40話

 僕たちはオークを求めて更に山の奥へと進むのだった。


 …………


「……いましたっ」

 コロがハンドサインも忘れて小さな声を出す。

 ちょっと興奮しているのか尻尾が小刻みに振れていた。


 ただそれも仕方ない気もする。

 あれから随分と山の奥に進むはめになったが結局モンスターと全く遭遇しなかったのだ。

 コロがちょっと嬉しくなってしまうのもわかる。


 コロの指差した先には一匹のオークがゆっくり道を進んでいる姿があった。


 まだかなり距離が離れているせいもあってオークはこちらに全く気づいていない。


 ここまで離れているなら話しても大丈夫と判断したのかリリアンナが会話OKのハンドサインを出し、

「一匹か……、後を着けてみましょう。もしかしたら仲間と合流するかもしれません」

 と判断する。


「なるほど、見つからないようにしないといけないな」

 僕もそれに頷く。


 ここまで来て一匹倒しても仕方ない。

 後を着けるのはいい考えだと思った。



「追跡ですねっ」

「おーけー」

 コロとエイリーンもそれに同意する。


 僕たちは発見したオークを狩らずに後を着けることにして更に深部へと進むこととなった。


 …………


「あれって……、村じゃあ……」


 オークの後を着けた結果、盆地のような場所にたどり着く。


 茂みに隠れて眼下を見下ろせば木で作られた家が多数あり、行き交う大量のオークがいた。その数は尋常ではなく、そこで生活しているのが間違いないと一目見て分かるほどの景色が広がっていた。



「クッ、まさか巣があるとは……」


 言葉を詰まらせて驚くリリアンナ。

 ほんの少し多めに狩る筈が大当たりを引いてしまった状態だ。


「ここへの道程がすごく入り組んでいたし、入り口が絶妙に隠してありましたよね」

 と、コロが言う。

 実際、オークの後を着けなければこの場所には辿り着けなかっただろう。



「まずいよ〜、ここは一旦帰ってギルドに報告した方がいいね」

 巣の状態を見てエイリーンがそう判断する。


 確かに僕たちだけであれだけの数を相手にするのは無理だ。

 さすがに多すぎる。


「そうですね。撤退しましょう」

 僕はエイリーンの方を見ながら頷いた。


「うん、まさかこんなことになるとはね〜」

 リリアンナとエイリーンの判断に従ってここから撤退する事になる。

 結局一匹も倒せなかったがこれは仕方ないだろう。



 僕たちがその場を去ろうとしたその瞬間――



「ブルァアアアアアアアアアッ!!」


 ――背後から急にオークが一体現れた。



 オークは叫びながら棍棒を振り上げて僕達に襲い掛かってくる。


「……あ」


 棍棒はオークと一番距離が近かったリリアンナへ向けて振り下ろされた。

 突然の事に反応が遅れ、目を見開いたまま固まってしまうリリアンナ。


「クッ、間に合えッ」

 僕は咄嗟に超剣術を発動すると抜刀して、振り下ろされた棍棒を切り刻む。


「ブルァ!?」

 一瞬で棍棒が木片になったことに驚き、固まるオーク。



「ハアアッ!」

 僕はその隙を逃さず、オークの胸を剣で数回貫いた。

 胸を貫かれたオークは生気を失い、膝から崩れ落ちる。


「あ、ありがとう」

 オークが倒れるのと同時にハッとして僕へと振り向くリリアンナ。


「さすがご主人様です!」

 快活な笑顔を向けてくるコロ。


 危なかったがなんとか凌げた。

 とにかくここから離れたほうが良さそうだ。



「見てっ! 何かおかしいよ!」

 そんな中、エイリーンが何かを見つけて声を上げる。


 エイリーンが指差した方向を見るとオークの巣の様子に異変が起きていた。

 さっきまではのどかな生活風景だったのに今は巣の中のオーク達が走り回っているのだ。


 そして次の瞬間、カーン! カーン! と甲高い音が巣全体に響き渡る。

 音に釣られて視線を辿ると物見やぐらにいたオークがこちらに気付いて鐘をついているのが見えた。


「逃げよう!」

 僕は皆にそう叫ぶ。



「ええ! 走りますよ!」

 リリアンナが元来た道へ向かおうとした瞬間――。

 その道を塞ぐようにして新たなオーク達が現れた。


 巣の側まで寄ってしまったためかこちらが気づかない内に接近されてしまっていたようだ。


「ッ! ダメです!」

 オークがいる方へ突っ込もうとしてしまったリリアンナを引き止めるコロ。



「あんな所から出てくるなんて……。まずいよ! とにかく戦えそうな場所を探すよ〜」


 エイリーンがそう言って道からそれて茂みへと飛び込む。

 それにコロとリリアンナも続く。

 僕は三人が逃走体勢に入ったのを確認すると掌に魔力を集中する。


「塩カッター!」


 そして、道を塞ぐオーク達目掛けて塩カッターを放った。


 純白の三日月はオーク達をいとも容易く真っ二つにする。

 しかし、オーク達を倒した次の瞬間、新手が現れて再び道を塞いでしまった。


 だが、死体が邪魔でうまくこちらへ来れずにいる。

 チャンスと判断した僕は三人に合流して茂みを駆け抜けた。


「ッ! なんだ今のは!?」

 塩カッターを見て驚くリリアンナ。


「ご主人様のスゴ技ですわん」

 まるで自分のことのように自慢げに話すコロ。


「見たことない魔法だな〜、気になるな〜」

 走っていることを忘れるほどのんびりした口調で僕へ興味を示してくるエイリーン。



「みんな急ぐよ!」

 追われているのに呑気に会話するみんなを急かして走る。






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