第38話

 道中、リリアンナの提案により、パーティ内での立ち回りを決めることになる。

 この辺りの知識は僕には皆無なのでリリアンナの存在がとてもありがたい。


「まあ、今回は四人だし無難に前衛二人、後衛二人といった配分がいいと思います。私は当然前衛でいかせてもらいますよ」

「おお、なんかパーティっぽい話し合いですね」


 なんかこういう話をしているとワクワクしてきてしまう。


「コロは剣が振りたいですっ」

「んん、じゃあ前衛かな?」


 コロが使えるスキルは剣術と初級回復魔法だ。

 僕的には回復魔法を主軸に使う事にして後衛に回ってほしかったがコロの意志は固そうだった。



 まあ、今回は四人で倒し易い敵を相手にするし前衛の経験を積むにはいい機会だと思う。折角のやる気を削ぐのも可哀相だしここはうまくフォローしていけばいいだろう。


「私は魔法使いだから後方での援護にまわるよ〜」

 と、エイリーンさんが告げる。

 エイリーンさんはバリバリの魔法使いなのでこれは当然だろう。



「となると僕は後衛か。ティンダーと塩カッターでなんとかなるかな……、どっちかっていうと剣の方がいけそうな気がするんだけどなぁ」


 最後に残された枠は後衛になる。

 というわけで僕は魔法での後方支援になりそうだ。

 ただ、超剣術のスキルもあるし、前衛の方がうまく立ち回れそうな気もする。


「なんとかなるも何もティンダーは強すぎるから味方を巻き込まないように気をつけないとね〜。剣も使えるなら遊撃ポジションって感じでいいんじゃない?」

「あ、僕の魔法ってそういう位置づけなんですね……」


 僕の呟きを拾ったエイリーンさんからティンダーは危ないと忠告を受ける。


 エイリーンさんは僕のティンダーを制御できる前のバージョンと着火魔法として使ったバージョンしか見ていないのでそう判断したのだろうけど今の僕なら規模の調節は自由自在だ。


 味方を巻き込まない程度の爆発に調節する事も可能だろう。

 ただ、遊撃ポジションという言葉に魅力を感じたのでそれで行ってしまおうと思う。


 また、魔法について誤解があったまま戦闘に入るのはまずいと考えた僕はティンダーを自由に調節できるようになったことを皆に説明しておく。いきなり撃ったら危ないしね。



 などとみんなで話しているうちに大体の役割が決まる形となった。



 接近戦メインのコロとリリアンナが前衛、剣と魔法両方使える僕が中衛で遊撃、そして魔法が使えるエイリーンさんが後衛と決まった。


 女の子二人に前衛を任せるのは気が引けるがここで僕がでしゃばって前衛を買って出ても仕方がない。


 男女うんぬんの前に僕達は冒険者だ。

 相手の役割を尊重し、信頼しあうべきで自分が恰好をつけるためだけに独りよがりな判断は避けるべきだろう。


 …………


 その後、簡単な打ち合わせをしながらエイリーンさんの案内でオークが出没するという山へと移動する。


「この間、森でもオークが出ていましたよね?」


 山へ向かう道すがらリリアンナに尋ねる。

 モンスターの生息区域とかはっきりと把握していないのでちょっと気になってしまう。


「ええ、きっと山から下りてきていたのでしょう。あの時私はスライムを狩りに来ていたんです」


「コロ達もよくあそこで狩っていましたわん」

 頷くコロ。


「あの森はスライムが頻繁に出る割に他のモンスターはほとんど出ないから初心者にはうってつけの場所だね〜」

 と、エイリーンさんが解説してくれる。


 どうやらみんなの話をまとめるとスライムの森付近にオークが出没する山があり、そこから下りて来た個体がたまたまいたのだろうという話だった。


 モンスターの種類によってある程度住み分けができていたりするのだろうか。



「へぇ〜、そうなんですか」


「はい。だから私も油断していたのです……、あの時二人に助けられなければまずかった」


 当時の事を思い出し、眉間に皺を寄せるリリアンナ。

 そんな愁いを帯びた表情はさらさらの金髪と白い肌に相まって誰もが振り返る色香を醸し出してしまう。確かにスライム目的で狩りをしていたときにオークの集団に襲われたら焦るだろう。


 ドキリとした僕はすっと視線をそらした。



「むふふ、先輩のコロに感謝するわん?」

「ッ! 冒険者としては私が先輩ですからにゃ!」


 コロの冗談に過敏な反応を示し、ちょっとかむリリアンナ。

 どうにも先輩後輩に関してはこだわりがある様子。

 さっきの表情から一変し、なんとも余裕のない顔になっている。


「なになに〜? 仲がいいね〜」


 そんなコロとリリアンナの会話を見てニヤニヤするエイリーンさん。

 どうやらエイリーンさんはリリアンナが慌てふためく姿を見るのが楽しいらしい。きっと凜としていたときのことを知っていてギャップで笑ってしまうのだろう。


「ところでさ〜」

 ちょっとむすっとした表情でエイリーンさんが僕を見てくる。


「ん、何ですか? エイリーンさん」

「それそれ〜」

「え」

 よくわからずに首を傾げる僕。


「私だけさん付けは嫌だな〜。パーティなんだし私もエイリーンって呼んでね」

「でも、エイリーンさんは先生でもあるわけですし……」


 エイリーンさんに自分だけさん付けは仲間外れみたいで嫌だと言われてしまう。


 だが、エイリーンさんは魔法の手ほどきを受けた先生だ。いくら歳が近いとはいえ、そんな気さくに呼ぶのはちょっと抵抗がある。



「歳もそんなに変わらないんだし気にしない〜。後、私がやだ」


 が、僕の意見は速攻で却下された。エイリーンさんが有無を言わせぬ表情で睨んでくる。これは“YES”と言わねばならない空気だ……。


「わ、わかりました……。改めてよろしくお願いします、エイリーン」

 長いものに巻かれた僕は改めてエイリーンと呼び、挨拶をした。


「うむ、褒めてつかわす〜。あと、名前だけじゃなくて言葉遣いももう少し軽くしてね。みんなもエイリーンでよろしくね〜」

 満足したエイリーンは深く頷くとみんなにも同じようにしてほしいと言う。


「はいっ」

「心得ました」

 それにコロとリリアンナも短く快活に返事をする。


 まだリリアンナにも呼び捨てで呼ぶのに抵抗があるのにエイリーンさんもこれで呼び捨て決定だ。





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