No.27『低反発』
佐原「根岸くん、低反発枕というものをご存知かね」
根岸「どうしたんですか博士、やぶからぼうに」
佐原「わしはいつでもやぶからぼうじゃ!ついでにたけやぶやけた!」
根岸「会話が成立してるかはともかく、回文ですね」
佐原「そのとおり、低反発枕じゃよ」
根岸「博士、会話をしてください」
佐原「だからじゃろうな、わしはこの低反発素材に目をつけた!」
根岸「博士ー、おーい」
佐原「そしてボブに言ってやったのさ、それはチキンナゲットかい?ってな」
根岸「ダメだ、博士が壊れた」
佐原「その言葉を待っておったのじゃよ根岸くん!」
根岸「うわビックリした、なんですかいきなり大声で」
佐原「キミはもし、わしが壊れてしまったらどうするかね」
根岸「埋めます」
佐原「そう!やさしくベッドにえええ!? 埋めないでよ!殺さないでよ!」
根岸「博士」
佐原「は、はい!」
根岸「まともですか?」
佐原「はい!まともです!元気です!だから埋めないで殺さないで!」
根岸「よろしい、で?」
佐原「うう、いつになく根岸くんが怖いよぅ。まぁとにかく、わしは低反発素材に目をつけたんじゃ」
根岸「ほう」
佐原「というわけで、いろんなものを低反発素材で作ってみたのじゃ」
根岸「有用なものがひとつでもあるといいですね」
佐原「失礼な、有用なものしかないぞぅ! まずはコレ、低反発タンス!」
根岸「……タンスの角に足の小指をぶつけたときに痛くない、以外の理由なら許します」
佐原「なっ、うっ、おっ!? ひ、ひきずってもフローリングに傷がつかないのじゃ!」
根岸「おー、博士にしては考えましたねー」
佐原「じゃ、じゃろう?(目がマジじゃ、迂闊なことを言えば埋められる!)」
根岸「他にもあるようですが?」
佐原「ひぃ!そっちのは習作だからダメぇ!」
根岸「……コレは?」
佐原「低反発……製氷機」
根岸「低反発素材で作る意味は、あったんですか?」
佐原「いや、それは遊びで作ってみただけだったんじゃけど、なんかね、氷がいびつな形になるの」
根岸「あー」
佐原「でね、いろいろ作ってみて思ったんだけど」
根岸「はい」
佐原「低反発素材のいいところってこう、やさしく包み込んでフィットするところだと思うのじゃよ」
根岸「おお、博士がまともっぽいことを」
佐原「まとも!まともじゃよ!だから埋めないで殺さないで!」
根岸「シャベルもそこにあったんですが、これじゃ埋められないですね」
佐原「おお、それはわしの作った低反発シャベル。土の形にフィットしてスムーズに掘れるかと思ったんだけど、だめじゃった」
根岸「鈍器にもなりませんね」
佐原「まさかこんなカタチでで低反発シャベルが役に立つとは……とりあえずわしを殺して埋めようとするのをやめなさい」
根岸「ジョークですよジョーク、低反発ジョーク」
佐原「うぅ、根岸くんがわしに反発してるのなんていつものことじゃないか……」
根岸「まあ気をとりなおして、他にはどんなしょーもないものを作ったんですか?」
佐原「しょーもないもの言うなし!これを見ておどろくなよ、低反発障子ー!」
根岸「障子、ですか?」
佐原「そう、障子。普通の和紙の障子だとすぐやぶれるじゃろ、そこらへんがこいつはどっこい、やぶれない!」
根岸「つついたら破れました」
佐原「ああん。光を通すためにうすーくうすーくしたのが裏目に!」
根岸「低反発の意味もまるで無いですねコレ」
佐原「次いってみよう、低反発爆弾」
根岸「ちょっと意味がわからないんですが」
佐原「ふかふか兵器じゃよ」
根岸「じゃよ、ってまたそんな爆発オチの伏線にしかならないような……」
佐原「大丈夫、コレは爆発しないから」
根岸「じゃあ、何がどう爆弾なんですかコレは」
佐原「ふかふかさが爆弾的!爆発的なふかふかさで人々は眠りという戦場へいざなわれるのじゃ!」
根岸「つまり枕じゃないか!」
佐原「おおう、よくぞ見破った。ほら、まくら、と、ばくだん、ってなんか響きも似てるし」
根岸「なんという思いつき発明」
佐原「あとこれも作ってみた、幕」
根岸「幕?」
佐原「低反発幕ー!」
閉幕
根岸「うわー、ふかふかだぁー」
佐原「じゃろぉー、ふかふかじゃろー」
根岸「あははー」
佐原「うふふー」
根岸「ふかふかー」
佐原「うわ、ちょ、根岸くん、幕でくるまなっ、もがっ、埋まるっ」
根岸「ふーかーふーかー」
佐原「もがっ、ふかふかに埋まっ、死っ……」
閉幕
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