5 メイ-計画の終息-

センケンノメイ。

ヒザマクラ復活計画」を終息させた、筆頭科学者。

賢者メイと呼ばれてる。

とても賢い。

他のネコも同じだけの基礎知識は持っているはずだけど、彼女の場合には何が違ったんだろう?

きっと思考と実践の量が桁違いなんだろう。

我々はみんな同等の知識を持っているけれど、個々の学習によって能力差が顕著になる。

人類だってそうだったと記録にある。

ネコは人類を引き継いだ。

やる気があれば能力は伸びる。

やる気がなけりゃ、伸びない。

仕方ない。


メイ自身は、やる気というより興味が自分をこのようにしたのだと言う。ネコたちも、そういうものか、と納得するほかなかった。

メイはあまりにも賢いから、他のネコたちから一目置かれている。

昔むかしに寿命で死に絶えたはずの「最初のネコ」のひとりなのではと、まことしやかに噂されてる。

我々は「最初のネコ」から既に十より多くを経た世代のネコだから、あり得ないんだけど。いくら改良強化されたって、ネコはそんなに長生きできない。

少なくとも、記録には無い。

とにかく、メイは賢いってこと。


メイの本名、センケンノメイは「先見の明」のこと。名前の通りに賢くて、先を見通すような助言を皆に何度も与えてきた。メイの知識は科学者の中でも別格って話はしたっけね。

メイが科学者になってすぐの頃、メイ自身の手による改良を施して製造されたヒトガタが、居る。

それが、キュリオなんだって。

「キュリオ」はメイが名づけた名前。自分がそうだったように、自分以上に何にでも好奇心を持つようにと、願いを籠めたそうだ。

実際、その願いは、あるいはカミサマに届いた。

ある日、キュリオが自分からメイに訊ねて由来を聞いたって。名前通りに好奇心を持ったわけだ。

それ以来、キュリオは意味や由来を大切に考えるヒトガタに育った。他のどんなヒトガタよりも優しく、素直で、知的に。

メイのように。


人類復活計画は無くなっても、キュリオのヒザマクラは無くならない。

騒動ののち、賢者メイも「キュリオのヒザマクラが本物のヒトと何ら変わらない」と太鼓判を押したこともあって、計画中止は我々ネコに、落胆ではなく希望をもたらした。

キュリオの人気はいっそう高まった。

だって、キュリオのヒザマクラがヒトと変わらないなら、キュリオはヒトだ。

単純に、我々ネコの総意はそこに集約した。

キュリオも我々ネコのことが大好きだと笑ってくれる。

だったら、それでいいんだと思う。

ヒザマクラが無くたって、みんなキュリオが好きだけど、映像で見た人類と猫がそうだったように、互いに想い合う関係があるなら、それでいい。

ヒトはネコの手を借り、ネコはヒトノテを借り。

互いに手を借り合って。


我々はヒトノテを借りたネコ。

ヒトノテを借りて暮らし、ヒトのヒザマクラに乗って、束の間の夢を見る。

膝枕に丸まる、猫になった夢を。

ヒザマクラの夢を。

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ヒトノテとネコとヒザマクラの夢 偽尾白 @niseojiro

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