4 キュリオ-ヒザマクラ復活計画-

キュリオ。

型番だけでなく固有名を持つ、女性型のヒトガタ。

名前を持つロボットの多くはヒトガタ。

特に、ヒトに近い見た目の者が持っている。

でも、まったくかけ離れた外見のロボットが持っていたりもする。

大抵は、人類が大昔にくれた名前なのだと、広場で、キュリオのヒザマクラの上で、そう聞いた。

人類は何にでも名前をつけた。

人は道具にさえ名前を与えて愛するものなんだって。

そうそう、キュリオのヒザマクラの話だった。

「私は人と同程度の体だそうです」

ある日の何だったかの話題の流れで、ふと、そのように言ったキュリオのヒザマクラは、俄に大人気となった。

温かくて、柔らかい、ヒザマクラ。

あのヒザマクラと、キュリオのヒザマクラは、同等!

憧れが、夢が、形を帯びたんだ。

新たな名所、歩く人気スポット。

キュリオの周りには、いよいよ、ネコが集まった。

今までも人気だったけど。

キュリオを軸にネコダンゴが出来てる感じ。


キュリオのヒザマクラが一大旋風を巻き起こしてすぐ、俄に、科学者が増えた。

ほんの半日も経たないうちに。

もともと我々の頭の中には、あらゆる知識が詰め込まれているって話はしたっけ?

とにかくそれが今こそ生きた。

昔、「三人寄れば文殊の知恵」とか言ったそうだ。

我々は三人どころかひとりひとりが文殊だから、文殊の群れだ。

文殊ってのは文殊菩薩。

ヒトからカミサマになったんだって。

ネコもカミサマになれるのかな。記録によればネコの姿のカミサマも居たみたい。

マネキネコという。

客を呼ぶとか、小判を呼ぶとか。

客というのは小判を持っている人類のこと。

小判というのは、人類の暮らしを豊かにする便利な物のこと。

昔は「猫に小判」と言ったらしい。

誉め言葉だ。

猫と小判。人類の暮らしを豊かにするもの、揃い踏みなんだから。

ともかく、だ。

カミサマは造れなくとも、ヒトは造れる、造ろう、科学者は躍起になった。

ヒトゲノム。それのどこだかを書き換えると、違う特徴や能力を持つ生き物を生み出せる。

「最初のネコ」もそうやってネコゲノムをいじって品種改良されたって。

それなのに人類自身は改良できなかった。

科学はちぐはぐだな。

でも、我々ネコの知恵を集めたら?

人類の叡智の遺産の、我々ネコなら?

ヒトを造り出せるかもしれない。

本物のヒザマクラに乗れるかもしれない。

「人類復活計画」が俄に熱を帯び始めた。

我々ネコにそれを成せるのか。

自然、喉が鳴る。

街じゅうが夢を見た。


盛り上がっておいてなんだけど、翌日にはみんなすぐに夢から醒めた。

古参の科学者、メイの意見を発端に、「ヒザマクラ復活計画」(いつの間にか計画名が「人類復活計画」ではなくなっていた)が中止になったんだ。

一人だけを復活させても、ヒトは困惑し、心に異常をきたすという。ヒトの精神はひとりぼっちに耐えられないから。

二人でも、三人でも、もっとたくさんでも駄目なんだって。街がいくつもできるほどの数じゃないと人類は存在できないって。

そんなにたくさんのヒトは面倒見られないし、そもそもそんな風に身勝手に命を創造し、それを従えるのは倫理に反すると、メイは諭した。

「最初のネコ」のひとりなのではないかと噂されるほどの賢者である彼女の言葉に、みんな素直に従った。

ネコだってひとりぼっちは嫌だもんな。

ヒトを復活させることは、永遠に、ない。

それがいい。うん。

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