3 憧れのヒザマクラ

映像を楽しむネコは多い。

人類が遺した過去の映像。

映画とか、テレビ番組とか。

まだ滅びの病気が流行る以前の映像。文明の元々の持ち主である人類が、そりゃあ大勢、たくさん、登場する。

たまに、猫が人類と暮らしている様子も見られる。

過去、猫は人類と共存していた。

人類は、結構な割合で、人類以外の動物と共に暮らすことを望む傾向にあった。猫はその中でも別格で、人と共に暮らしていて、猫缶とカリカリを与えられ、気ままに暮らしていたようだ。

人類を従えていたとも聞くけど、その辺りは明確な記録は見当たない。

有力な証拠がこの映像。

そしてヒザマクラ。

ヒトが座ったフトモモに乗ることを言う。

膝を枕にするからヒザマクラ。

フトモモマクラじゃ語呂が悪いからヒザマクラ。

映像の猫は、そのヒザマクラで寛いでいた。安心して丸まって、撫でてもらって、気持ちよさそう。

猫のためにあると言っても差し支えないほどの贅沢感だし、なにより、ヒトがそれを望んでいるように見える。

少なくとも、その映像では。

たっぷりと甘えて満足したら、欠伸をして伸びをして、ニャアと鳴いてヒザマクラから降り、自分専用の皿に向かう。すると、ヒトが猫缶とカリカリをくれる。

ここの場面も、猫がヒトを従えていたという、説得力ある証拠のひとつだと主張するネコたちも多い。

対等な関係だったんじゃないかな。

猫は猫で、獲った鼠や鳥なんかを、ヒトに与えていたというから。

代わりに猫缶とカリカリをもらう。

持ちつ持たれつ、だ。

いまと変わらない猫缶を食べてた。

猫まっしぐらだって。涎。

そしてヒザマクラ。夢。


映像で知って以来、ヒザマクラに憧れつつも、ヒトガタはヒトガタ、本物の人類には及ばないと割り切っていた我々。

ヒトガタの膝に乗ってみた猫は大勢いる。皆、一様にがっかりした。期待した安息は、欠片ほども得られなかった。なにしろ硬い。なんて言えばいいのか、映像の猫が寛いでいたヒザマクラは、こうじゃない気がする。確信する。

映像にはこんなのもあった。

ヒトが出掛けて家に残された猫が、わざわざ、ヒトの持ち物をお気に入りの場所まで咥えて運んできて、ヒザマクラの代わりにそれを抱えて眠るんだ。

そんなにするほど、ヒトが好きなんだ!

ヒトが帰ったら、また、あのヒザマクラに乗って喉を鳴らしたんだろう。

ヒザマクラ。

憧れる。

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