・ニューイヤー プロミス?


 すっかりベッドルームが明るくなっているのに気が付いて、眞子はむっくりと起きあがる。

 ブランケットにくるまっている身体は、裸のままだった。

「う……ん……」

 ひさしぶりの、男の人との夜だったせいか、身体がけだるい。

 でも……身体の奥に甘い疼きが残っていて。眞子はそっと頬を熱くした。

「お、やっと起きたかな」

 もう白いワイシャツにネクタイを締めている専務がベッドルームを覗いた。眼鏡をかけているけれど、いつものおじいちゃん眼鏡。すでにキリッとしたモデル男並の姿になっている。

「おはようございます……、専務……」

 まだ寝ぼけた顔でとりあえず挨拶をすると、彼がおかしそうに笑う。

「その専務って、いつかやめような」

 いまはまだ恋人になったばかりだから、そのうちな――と笑ってくれる。

「俺、いまから父親の自宅へ新年挨拶と、家族揃って会社安泰祈願で神社での初詣祈祷にも行ってくるから」

「え、もうそんな時間なんですか」

 裸だけれど、見繕いしようとベッドを降りようとしたけれど、ベッドのふちに座った専務にまた毛布にくるまれてしまう。

「いいよ。まだ休んでいて」

「新年なのに。朝からこんな姿で……」

「俺だって毎年、この時間は、この部屋でぼさっとして起きるよ」

「そうでしょうけれど」

 眞子――。専務が裸でいる眞子の頬に触れる。

 かっこいいネクタイを締めた姿、でもおじいちゃん眼鏡。それでも眞子は頬が熱いまま、彼を見上げた。

「昨夜……、俺、すごく嬉しかった。いまも目の前にいてくれて、こんな朝、こんな新年、幸せだよ」

 そのまま裸でベッドにいるだけの眞子に、キスをしてくれた。しかもそのキスが、長い。でも、眞子もうっとり浸ってしまう。

「俺が留守の間、なんでも勝手に使って良いよ。リビングで映画を観てもいいし、冷蔵庫にも少しだけど簡単に食べられるもの置いているから。親父の家でいろいろ料理が出るんだけれど、いつも持ち帰ってくるから、それで二人の新年会をしよう」

 こんなゆったり素敵な新年は眞子もはじめてで。にっこりと微笑み返して頷いた。

 最後に専務が、眞子の乱れた黒髪をそっと愛おしそうに撫でてくれながら、ささやいた。

「来年は、俺と一緒に、篠宮の新年会に連れて行くよ」

 え? 篠宮のって……。篠宮社長とかカンナ副社長とか、人気モデルだったお母様のいる自宅へ連れて行くってこと?

 それって……。眞子が茫然としていると、専務はなにもかもわかった顔でにっこり微笑み、素肌の眞子をぎゅっと抱きしめてくれる。

 家族に、一族に紹介するってこと?

「あ、そうだ。隣の部屋は俺の衣装部屋みたいになっているんだけれど。クローゼットを覗いてみて」

「クローゼットですか……」

「うん」

 専務はそれ以上はなにも言わず、しばらくするとビシッと黒スーツで決めて、出掛けていった。



―◆・◆・◆・◆・◆―



 お言葉に甘えて、眞子は専務のぬくもりが残っているベッドでしばらくゆったりして、シャワーを浴びる。

 お洒落な大人の、独身男性の住まい。センスがいいその部屋でひとりお留守番だったけれど、明るい陽射しが入ってくるリビングで眞子はとても満ち足りた気分。


 専務が言っていた隣の部屋のクローゼットを開けて、眞子はびっくりする。

「え、これ……、私の?」

 クリスマス前に素敵な服をプレゼントしてくれたばかりだったのに。

 専務のスーツがずらっと並んでいる隅っこに、スカートにブラウスにワンピース、数日は着回しができるだろう服が取りそろえられていた。

 また素敵な服ばかり。

 着てごらん、きっと似合うから。これがあるから俺の部屋からでかけようよ。一緒にいよう。そんな専務の声が聞こえてきそう。

 こんな素敵な気持ちにさせてくれるだなんて――。

 肌に残っている専務のくちづけの痕。それを感じながら、眞子はブラウスを手に取る。

「専務、好き……、大好き」

 明日からまたきっと、専務と本田さんになって忙しさに追われる日々がやってくるけれど。

 でも。今年はずっと彼と一緒にいたい。仕事じゃない時間もずっと一緒に……。



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