第10話 いがみ
いつからか、夢を諦めた―――かかえきれない夢を持ったはいいけれど、叶えたいのはどれだかわからなくなった。そしていつしか、コンビニのバイトに成り下がっていった。
いつか、人生は幸せになれるものだと信じていた。けれど、実際はこんなものだ。そう自分に言い聞かせ、ここまで歩んできた―――
明日はX'mas。世間のリア充どもはイチャつく。俺は三十で。ある程度の話相手はいるものの、友人はほぼ皆無だ。
まあいいや、そう思い近くのコンビニに入る。いつしか、自分のバイト先と同じチェーン店のコンビニにしか入らなくなっていた。
「うー寒ぃ……」
一人言を呟き、イージーリスニングのBGMを聞き流しながら弁当売り場に向かう。300円ののり弁を適当に選び、レジに向かう。
「温めはどうしますか?」
レジのキレイなお姉さんが聞いてくる。
「はい」、と返しながら俺はあんたに暖めて貰いたいわ、とか思いながら弁当を受け取る。
「ありがとうございましたー」背中に声を受けながら店を出る。
「あー、マジかー……」
空を見上げると、遥か虚空からは白い粒が降ってきていた。
「彼女もいないのにホワイトクリスマス……ってか、積もらないといいけどなー」
基本的に徒歩と自転車の俺にとって、アイスバーンとなれば死活問題だ。チャリで滑って転んで死んだりしたらシャレにならん。ガキんころは雪だゆきだと、騒いで嬉しかったものだが。今は大して嬉しいものでもない。
しんしんと降る雪の街を歩く。それだけで違う世界のようだ。街並みが違って見える。
ふと、わけもわからず、
なんというのだろう、脳障害かなんかか、というくらいの目眩?物悲しいような、どうしようもない感情
(なっ……なんだ物悲しい……)
現実と解離してゆく。なにもかもが夢のようだ。胡蝶の夢?微睡みと意識がついえるような、きもちいいようなキモチ悪いような。。
もうずっと経験してるような、、夢か幻か。本当に現実なのか、ここは?なんだろうこの感覚……ザワザワするような、魂から落ち着かない感覚は?本当に気のせいなんだろうか?わざとらしく、体を震わせてみるも、その感覚が消えることはなかった
何度も時間をループしているとしても、その中で人は気づくことは出来ない、というのをどこかで読んだな、なんて思い出した
頭痛がする。目眩。動悸。けれど寒くて、底冷えするような冷たさ
気づけば雪も強く降って吹雪いている。。。
あれ、こんなに強かったっけ?
辺りは次第に白く覆われていって、近くの家々も雪化粧をしてゆく。銀世界に覆われてゆく
まるでドラマか小説の別世界のようで。
やばい、ガチでくっそ寒い……なんだよこれ……
体の芯まで冷やされていく感覚により、俺はそこで意識を喪った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます