第113話 里帰り(その18)

「ところでこのにく、おいしいですねぇ」

「あまり食べた事のない味なのよねえ」


 B子とC子が大皿に盛られた唐揚げを美味しそうに頬張りながら訊く。


「あー、そのお肉はねぇ~」


 どん。


「昨日裏で獲れた熊の肉なのよぉ~」


 そう言って怒依は、テーブルの上に少し焦げたクマの頭を置いた。

 それを見て思わず凍り付くA子。


「なななな」

「……おめー、昔俺に猿の脳みそ食わせた事あるのに何ビビってる」


 ご主人様は唖然とするA子の横で熊の唐揚げを頬張った。


「あー、くまさんですかー」

「なーる」


 B子もC子も安心した風に唐揚げを食べる。


「何このウチの連中のワイルドさ」


 A子の顔は引きつったまであった


「ていうか! どうやって熊を?!」

「素手で」


 そう言って怒依は右手をかざして放電して見せた。


「……流石伝説の雷獣。熊が焦げているのはそれが原因なのか」

「時々紛れてくるのよねえ~。最近は人里にも降りてくるようになって困っちゃうのよねぇ~」

「暴れるの?」

「春慶様が粉砕しちゃうから掃除がねぇ」

「え」


 思わずこわばるA子。


「あー、兄貴なら仕方ないかあ、色々もてあましているからなあ」

「そんな普通に言わないでください! あの女みたいな人が! 素手でぇ!?」

「ガキの頃から化け物みたいな体力の主だったからなあ」

「おかげでアッチの方もお相手するのが大変で~きゃあ~絶倫すーごーいー」


 怒依は頬を赤らめて照れまくった。


「……とりあえずその血生臭いモノ何とかしてくれません?」


 A子は熊の頭を指して呆れるように言う。


「あー、ゴメンねぇ、今片付けるから~」


 ごきん。ぼきん。ぺき。ぽき。

 肉と骨が砕ける音がしばらくの間客間に鳴り響いた。


「ふう。久しぶりのご馳走だったから嬉しくてつい……あれA子さん何青い顔して~?」

「そろそろ風呂へ行くかな」


 そんなA子を気にもせず、ご主人様は立ち上がった。


「着替えは後で持ってきますからどうぞごゆっくり~」

「ども。ゆっくり食ってて良いぞー」

「「はーい」」

「……」

「どうしたA子、顔色悪いぞ?」

「……いえ、どうぞごゆっくり…怒依さん、胃腸薬無い?」

「熊の胃ならあるわよ~」

「熊はもう勘弁して……」

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