第99話 里帰り(その4)

 結局A子はご主人様の本名を教えて貰えぬまま、ご主人様の実家があるという山の登山道口に来た。


「……何この1327メートルって数字」

「頂上までの距離だが」

「そんなの分かってンですよ!」


 独りハブられたA子は少し苛ついていた。


「コレ、登るんですか! バスとか無いんですかっ!」

「その為の登山装備だが」

「そん………」


 その場にガックリとひざを突くA子。


「あー、でもこれ距離だから実際はそんな標高はないぞ」

「それくらい分かってますが、それでもキツイッス…」

「引きこもってゲームばかりやってるから体力無いんですよねお嬢様」

「やかましい」

「ほら、チンタラしていると日が暮れて家に着かないぞ」

「ううっ……正月からリアルヤマノススメなんて……」

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