第23話 下着その3

ご主人様はA子がPCの前で唸っているのに気づいた。


「どうした?」

「通販で下着を探していたら、ちょっと困った事になって」

「ああ、そういやさらしはやめたんだっけ。良いのが見つからないのか?」

「否」


A子は首を横に振った。


「探したんですが、私に合うヌーブラが無いんです」

「待てやコラ。どんだけ背伸びしてるんだ。ああいうのはお前さんには無理――アウチッ!」


すかさずご主人様のスネを蹴るA子。


「何しやがるかっ!」

「人間諦めたらお終いって安西先生が言ってました!」

「知るか! 背伸びしなくてもシュミーズ使えばいいじゃん!」


するとA子は困惑を浮かべる。


「……ナニソレ?」

「へ? シュミーズ知らんの?」


不思議がるご主人様の前でA子はしばし傾げる。そして何かを理解したふうに、ああ、と手を叩いた。


「ひょっとしてスリップの事?」

「俺滑った事言ったか?」

「違います。今そういうのはスリップまたはキャミソールと言います。

 今時シュミーズなんておばちゃんしか言いません」


A子はケラケラ笑った。


「べ、別に間違っていいだろ、野郎は着ないし」


ご主人様はむっとして膨れてみせた。


「てかあれ死語なのか?」

「もうその名前は見かけません」

「へえ。でも何故使わない」

「嫌だから」

「偉そうブラなんか着けられる胸かお前」


A子はもう一度ご主人様のスネを蹴る。ご主人様は悲鳴にならない悲鳴を上げた。


「本当に足癖悪いなお前!」

「失礼な事言うからですよーだ」


A子はあかんべえをした。


「ったく……」

「……使わないんじゃなくて試してみました」

「ん?」

「……そしたら」


A子は何故か言葉を濁す。


「……小学生サイズも試してみたのに……それも大きすぎて……今時の小学生は私より体格良くて……」


ご主人様思わずもらい泣き。

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