第19話 スカート

ご主人様とA子はマンションの庭園にいた。


「この辺りはもう一ヶ月も降ってませんね」


異常気象と認定されるほどの猛暑に花壇は枯れかけていた。


「可哀想なので水でも上げましょう」


そう言ってA子はスカートをたくし上げる。


「おいっ?」

「?」


A子はきょとんとした顔で中から水筒を取り出していた。


「紛らわしい所に仕舞うなっ!」

「よく冷えてます」


A子は仕舞っていた保冷剤も取り出して見せた。


「……ったく、そんなところに保冷剤とか水筒とか……四次元ポケットかそこは」

「便利じゃないですか」


素で答えるA子を前にご主人様は思わず仰いだ。


「……兎に角人前でスカート開くなよ」

「嫉妬ですか」

「違うわ!」

「大体、そんな面倒な所に入れていたら歩きづらくないのか?」

「別に。鍛えてますから」


そう言って今度はスカートの中から5キロの鉄アレイを取り出した。


「……俺は突っ込んじゃいけなかったのかも知れない」


思わず後悔するご主人様であった。


「どうです、ご主人様もスカート履きます?」

「要らん!」

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