総角 その九十四
姫君の前の女房たちはこの匂宮に見られるのを恥ずかしがって物陰に隠れている。女一の宮はこともあろうに何という変なことを、と思うので返事もしない。ごもっともなことで、物語の中で、〈うらなくものを思ひけるかな〉と返歌をした昔の姫君はすれていて小憎らしいと匂宮は思う。
紫の上が特別にこの二人を仲良く育てたので大勢の兄弟の中でも特に互いに打ち解けて親しくしている。中宮もこの上なく大切に扱って仕える女房も十人並みでなく少しでも欠点のあるものはいづらそうにしていた。身分の高い家柄の姫君なども女房の中に多くいる。
匂宮は生来浮気な性分の人なので、新参の女房たちに戯れに手をつけたりしながらも宇治の姫君のことは少しも忘れるときもない。それでも訪ねることはできないまま日がいたずらにすぎていくのだった。
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