総角 その六十五

 宇治では薫の君が三日夜のお祝いを仰々しく言って寄越したのに、匂宮は夜が更けても来ずに手紙が届いたので、



「ああ、やはり」



 と大君は胸がつぶれる思いでいたところ、真夜中近くになって荒々しく吹きつのる風邪を冒して匂宮がいかにも優艶な気高い美しさで言いようもない芳香を漂わせながら来た。


 大君もその宮の誠意をどうして疎かに思うだろう。中の君自身も少しは打ち解けた様子なのも匂宮の並々でない情熱に強く感じたところがあるのだろう。今が一番美しい盛りのときと見え、まして今夜の格別華やかに着飾っているその姿はまたとは来ないと思われる。


 日頃あれほど美しい女君たちをたくさん見慣れている匂宮の目にさえ中の君は見劣りせず、容姿からはじめ近くで見れば見るほど美しい人と感じる。まして山里の老女房たちはなおのこと醜い口もとを笑み崩れさせて、



「中の君はこんなにもったいないご器量でいらっしゃるのに、たいした身分でもない殿方と結婚なさったらどんなに悔しかったでしょう。これこそ望み通りの結構な縁組」



 と口々に話す。それに引き換え大君の心が妙に頑固で今もまだ薫の君に片意地はっているのを口を歪めて悪く噂するのだった。

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