総角 その五十七
中の君は返事もしないが、内心では、
「それでも姉君がこんなにお心にかけてくださり、いろいろ言い訳なさるのは私のことが心配で、不幸にならないようにとお考えくださってのことだろう。けれどもこの先匂宮に捨てられて人の物笑いになるようなみっともないことになり、また姉君にご面倒をおかけするようになったらそんなにつらいだろう」
などとあれこれ思いあぐねている。
匂宮は昨夜の中の君がそんなことになるとも夢にも知らず、ひたすら呆れるばかりで呆然としていた様子も並々ならず可愛らしく感じたのに、まして今夜は少しは世の人並みに女らしくもの柔らかにしているので、いっそう愛しさも深くなる。それにつけてもそうたやすくは通えそうもない山道のはるかさを思うと胸が痛むような切なさでいかにも誠意のこもった様子に愛情をこめてやさしく将来を約束するが、中の君はうれしいとも何とも匂宮の愛情を理解しないのだった。
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