総角 その四十七

 大君は、



「何と言う嫌なことをなさるのだろう。どうして言いなりに対面などしてしまったのだろう」



 と後悔し、腹も立つが何とかなだめすかしてここから出てしまおうと思い、中の君を自分同様に思ってくれるようにとそれとなく頼む心遣いなどはとても胸を打たれるやさしさだ。


 匂宮は薫の君が教えた通り先夜薫の君が忍び入った戸口に近づいて扇を鳴らすと、弁がすぐに現れて宮を案内する。


 これまでも度々そうしたらしい弁の物慣れた案内ぶりに匂宮は内心おかしく思いながら中の君は部屋に入った。


 大君はそんなことを知らず、何とかして薫の君をうまく言いなだめて中の君の部屋に行かせたいと思っている。薫の君はそんな大君がおかしくも気の毒にも思い、このままでは後になってまったくそんな企みも知らなかったと恨まれても弁解しようがないと思うのだった。

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