総角 その三十九
女房たちは、
「こんなことになってどなたのためにもお気の毒なこと」
とひそひそと囁き合っている。
大君もいったいどうしたことだろう、もしも薫の君が中の君にいいかげんな気持ちだったらどうしようと胸もつぶれる思いで心配でたまらないので、することなすこと何でもちぐはぐな女房たちのお節介のためと憎らしく思う。こうしてあれこれ悩んでいるところに薫の君から手紙が届いた。それをいつもよりはうれしく感じるのも、考えてみれば不思議なことだ。
秋の季節も知らないような青々した楓の片枝だけが濃く紅葉しているのを添えて、
おなじ枝をわきて染めける山姫に
いづれか深き色と問はばや
あんなに深く恨んでいる様子だったのに、恨み言はほとんど言わず、手紙は恋文らしくない無造作な包み文にしてある。それを見て大君は昨夜のことをさりげなく何事もなかったようにしてすませようというつもりらしいと思うにも胸騒ぎがするのだった。
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