総角 その三十四

「中の君は薫の君との御縁談のことをちょっと話しただけでも、あれほどいやがっていらっしゃったのに、ましてこんなことになればどれほど心外に思われて私を疎ましく思われるだろう」



 と実に不憫でたまらないにつけてもこれもすべてしっかりした両親の後見もなくこの世に生き残っている姉妹の身の上の悲しさだと考え続けると、今日を限りと山へ入った夕暮の亡き父宮の姿などが今、目の前に見えるような気がして、とても恋しく悲しく感じる。


 薫の君は姫君が一人で寝ているのをさては大君もそのつもりで計らったのかとうれしくて、胸もときめく思いだったが、次第に大君ではないことがわかってきた。


 この中の君よりもう少し可愛らしく、可憐な美しさはまさっているように思う。中の君があまりのことにあきれて途方にくれているのを、これはきっと事情を何一つ知らなかったのだと察せられるので、とても可愛そうになるのだった。

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