椎本 その四十七

 大君は自身の話とは夢にも思わず、中の君の親らしい立場で答えなければと思案を巡らせているが、やはりどう返事していいかわからない気持ちになり、



「いったい何と申し上げたらよろしいのでしょう。私ども姉妹に何かかかわりがありそうにいろいろお話になりますのでかえって返事の申し上げようもございませんので」



 と笑いに紛らわしているのもおっとりした中にも好ましい感じがする。薫の君は、



「この匂宮のお話は必ずしもあなたさまご自身のこととおとりくださらなくてもいいようです。あなたさまはこうして雪を踏み分けてわざわざ参りました私の気持ちだけをお汲み取りくださって姉君としての立場でお聞きくださればよろしいのです。匂宮のご執心の相手はどうやら中の君のようなのです。宮が中の君にもそれとなくちらとおもらしになったようですが、さあ、それも傍からはどちらも姫君ともはっきりわかりかねます。匂宮への返事などはお二人のどちらからお出しなさるのでしょうか」



 と聞くのだった。

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