橋姫 その六

 春のうららかな日差しに庭の池の水鳥が互いに羽を交わしながらそれぞれにさえずっている声などを八の宮はいつもは気にも留めず見過ごしていたが、今は雌雄が仲良く離れないのをうらやましく見ていて、姫君たちにお琴を教える。二人ともとても可愛らしくて、まだ小さいなりに掻き鳴らすお琴の音色がしみじみ面白く聞こえるので、八の宮は涙を浮かべて、




 うち捨ててつがひさりにし水鳥の

 かりのこの世にたちおくれけむ




「悲しみの種の尽きないことよ」



 と目を拭っている。顔立ちのいかにもきれいな宮でいる。長年の勤行に痩せてほっそりしたが、そんな姿がかえって気品高く優雅見える。姫君たちをお世話する心遣いから萎えばんだ直衣を着て、取り繕わない様子がいっそう気品が匂い立つようで気が引けるほどの奥ゆかしさだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る