橋姫 その四
姉の大君のほうは性質がしとやかで深みのある人で、容姿も物腰も気高くて奥ゆかしい様子だ。いじらしくいたわってさしあげたいような繊細な感じやいかにも高貴な血筋という感じでは中の君よりまさっている。
八の宮はどちらの姫君をも分け隔てなくそれぞれに大切に育てているが、暮らし向きのことで思うにまかせぬことも多くて年月が経つにつれて邸の内も次第になんとなく寂しくなってゆくばかりだ。仕えていた人々も将来が頼りなく思うので、辛抱しきれずに一人また一人と暇をもらって散り散りに去っていく。
中の君の乳母も北の方の逝去の騒ぎの折も折なので、しっかりした人を選ぶこともできなかったため、身分相応の思慮の浅さから頑是ない姫君を見捨てて去ってしまったので、その後は八の宮一人で育てた。
さすがに邸は広くて風雅な風情だ。池や築山のたたずまいだけは昔のままだが、とてもひどく荒れ放題なのを、八の宮は所在なく物思いに沈みながら眺めている。家司などしっかりした責任者もいないので、手入れする人もいなく、草が青々と繁り、軒のしのぶ草が我が物顔に一面に青くはびこっている。四季折々の花や紅葉の色や香も北の方とふたりで同じ気持ちに眺め楽しんでこそ慰められたことも多かったのだが、孤独になった今は淋しさもひとしお身に沁み、心の頼りどころにするものもないままに念持物の飾りばかりを格別入念にして明け暮れ勤行に励んでいるのだった。
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