橋姫
橋姫 その一
その頃、世間からはすっかり無視されて零落した古い宮がいた。亡き桐壺院の八の宮で、光源氏とは異腹の弟宮に当たる。母方なども高貴なれっきとした家柄で、一時は東宮に立ちそうな噂などもあった。
それだけに時勢が変わり時の権力から冷たく扱われるようないきさつがあって、かえって昔の威勢の跡形もなくなった。後見の人々も東宮になる期待を裏切られて落胆し、それぞれの立場からこの宮に見切りをつけて側から身を引き去っていった。
八の宮は公私ともにまったく頼りない身の上になって孤立してしまい、世間から見捨てられたような状態だった。
北の方も昔の大臣の姫君だったが、今の境遇がつくづく心細く情けなくて両親が行く末は后の位にもと描いていた夢などを思い出すと、たとえようもなく辛いことが多いのだった。それでも夫婦の愛情がこの上もなくしっかりしていて睦まじいことだけを辛いこの世の慰めとして互いにこの上なく頼りにしあっているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます