橋姫

橋姫 その一

 その頃、世間からはすっかり無視されて零落した古い宮がいた。亡き桐壺院の八の宮で、光源氏とは異腹の弟宮に当たる。母方なども高貴なれっきとした家柄で、一時は東宮に立ちそうな噂などもあった。


 それだけに時勢が変わり時の権力から冷たく扱われるようないきさつがあって、かえって昔の威勢の跡形もなくなった。後見の人々も東宮になる期待を裏切られて落胆し、それぞれの立場からこの宮に見切りをつけて側から身を引き去っていった。


 八の宮は公私ともにまったく頼りない身の上になって孤立してしまい、世間から見捨てられたような状態だった。


 北の方も昔の大臣の姫君だったが、今の境遇がつくづく心細く情けなくて両親が行く末は后の位にもと描いていた夢などを思い出すと、たとえようもなく辛いことが多いのだった。それでも夫婦の愛情がこの上もなくしっかりしていて睦まじいことだけを辛いこの世の慰めとして互いにこの上なく頼りにしあっているのだった。

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