竹河 その五十二

 四月には御息所に女宮が生まれた。姫君のことなので、格別目立って晴れがましい出来事ではないようだったが、冷泉院の意向に従って夕霧の右大臣をはじめ産後の宿縁をする人々が大勢来た。


 祖母の玉鬘の君がずっと抱いて可愛がっていたが、早く院へ帰るよう冷泉院がしきりに催促ばかりするので、五十日のお祝いの頃に院の御所へ戻る。


 冷泉院には女宮が一人いたが、この姫君が本当に久しぶりのことに世にも珍しいほど可愛かったので、院はとても喜んでいる。


 前にもましてこの頃ではいつも御息所のほうにばかりいる。弘徽殿の女御の女房たちは、



「いくら何でもこんなになさらなくてもよさそうなご縁なのに、なんて情けない世の中だこと」



 とただ事ではないと心中不平に思い、口にもしているのだった。

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