竹河 その四十七
「竹河」を謡って階段の側に足踏み高く舞いながら近寄っていく時、少将は過ぎ去った去年の正月のあの夜のはかなかった一夜の遊びが思い出され、舞い損ねもしかねないほどになって涙ぐむ。
秋好む中宮の御殿に行くと、冷泉院もそちらに来て見る。
夜が更けていくにつれ月が昼間より明るく恥ずかしいほど鮮やかに澄み渡りながら登っていくので、いったい御息所が自分をどう見ているのだろうかと蔵人の少将はそのことばかり気にかかっていた。宙を踏むような上の空の心地で、ふらふらと歩き回り、盃も自分ひとりを目指して指されているように思って面目なく思う。
薫の君も夜一夜あちこち歩き回って、ひどく疲れ果てて苦しくなり、横になっていると冷泉院から呼び出しがあったので、
「ああ苦しい、しばらく休んでいたいのに」
とぐずぐず言いながら参上するのだった。
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