竹河 その三十一

 気の毒だと思っても、今更何と言って慰めようもない。あの少将の失恋を慰めようとした玉鬘の君と中の君との結婚の提案も露ほどうれしいと思っている様子も見えない。中将のおもとは、



「やはりあの夕暮、姫君たちのお姿をあまりありありと御覧になったので、いっそうこんなふうにどうしようもない恋心がつのったのだろう。無理もないこと」



 と思い、



「覗き見なさったことが母君のお耳にお入りになりましたら、何というけしからぬお人かとますますあなたをお嫌いなさることでしょう。私だってお気の毒と思っていた気持ちもなくなりましたわ。本当に油断のならないお人でしたのね」



 と逆手にとって文句を言うと、



「いや、それならそれでもいいさ。もうどうせすぐ死ぬ私だもの。今はもう何も怖いものなどなくなってしまった。それにしても碁に負けてしまわれたのがとてもお気の毒だった。すんなりと私をあそこへ呼び入れてくださったら目くばせしてお教えして絶対勝たせてさしあげたのに」



 などと言うのだった。

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