竹河 その二十八

 この話を聞いて蔵人の少将は死ぬかと思うほどに思いつめて、母、雲居の雁の君を責め立てるので、母君はこの泣き言にほとほと当惑しきっており、



「こんなお恥ずかしいことをそれとなくお願い申し上げますのも、本当に世にも愚かな親心の闇に迷うからでございます。お気づきのむきもございましたなら、どうかご賢察のうえご同情くださいまして、今からでも当人の心の休まりますよう何卒何卒お取り計らいお願い申し上げます」



 などいかにも気の毒なような手紙を寄越す。玉鬘は、



「本当に困ったこと」



 とため息をつき、



「どうしたらよろしいのやら、私では決めようもございませんでしたが、冷泉院からたってのご所望がございまして、思案にくれております。本当にこちらの娘をとお望みくださいますのなら、ここのところしばらく辛抱くださいまして、いずれ納得のゆくようお計らい申し上げられるかと存じますのをご覧くださいまし。そのほうが世間の噂にもならず穏やかでございましょう」



 などと返事をする。それは大君の院への輿入れが終わってから中の君を少将にと思っているのだろう。

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