竹河 その二十四

 中将たちが引き上げた後、姫君たちは中止していた碁をまた打ち始めた。小さい時から取り合っていた桜を賭けて、



「三番勝負で一つ勝ち越した人が桜をもらうのですよ」



 と二人で冗談を言い合っている。


 辺りが暗くなったので、端近いところに出て終わりまで打つ。御簾を巻き上げてそれぞれの女房たちも皆張り合って自分の姫君の勝ちを祈る。


 ちょうどその時、例の蔵人の少将が藤侍従の部屋を訪ねてきたが、兄弟たちが一緒に連れ立ってお出かけになった後だった。いつもは人が少なくひっそりしているのに今日は廊下の戸が開いていたので、そっと立ち寄って覗き見をした。こんなうれしい機会を見つけるとは、仏などが姿を見せたところに偶然参り合わせでもしたようなありがたい思いがするのも、少将の哀れな恋心というものだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る