竹河 その二十

 桜の細長に山吹襲などの春の季節に似合った色合いのやさしく重なった裾まで愛嬌がこぼれ落ちるように見える。体のこなしなどもさわやかで隙がなく、こちらが気のひけるような感じさえ身に添えていた。


 もう一人の中の君は薄紅梅色の着物に髪も艶々としてしだれ柳の枝のようにたおやかに見える。この人は上背がすらりとしてみやびやかでしっとりとして落ち着き、重々しく思慮深そうなところは、姉君に優っているようだ。それでも華やかな美しさでは姉君にとても及ばないと女房たちは思っている。


 二人で碁を打つので、差し向かいに座っているその髪の生え際や長い髪が衣装に垂れ下がっている様子なども本当に美しい。


 藤侍従が勝負の審判役で、側近くに控えているのを、兄君たちがちょっと覗いて、



「侍従はたいしたお気に入りになったのだね。碁の審判役を許されたとは」



 と言って大人びた態度で座るので、側の女房たちもそれぞれ居住まいを直す。兄君の中将は、



「宮仕えが忙しくなったので、侍従に出し抜かれたとはまったく残念だね」



 と悔しがると、次兄の右中弁が、



「弁官の私は兄君以上に忙しくて、つい家で野姫君たちへの御奉公がおろそかになりますが、それをそんなにあっさり見捨ててしまわれてもよいものでしょうか」



 などと言うのだった。

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