竹河 その十三
この家の三男の侍従の君はまだ昇殿もしていないので、参賀にあちこちへ廻ることもなくその場に居合わした。浅香の折敷二つほどに果物と盃だけを入れる。玉鬘の君は、
「夕霧の右大臣はお年を召すにつれて亡き光源氏様にますますよく似ていらっしゃいましたね。薫の君は光源氏様に似ていらっしゃるところも見えないのに、ご様子がいかにもしっとりしてみずみずしい物腰などは光源氏様のお若い盛りのころが思いやられてなりません。光源氏様のお若い頃はきっとこんなふうでいらっしゃったのでしょうね」
などと昔を思い出し、涙ぐんでしおれていた。
薫の君の帰った後まで残る素晴らしい芳香を女房たちは大騒ぎしてしきりに褒めちぎっている。
薫の君は堅物という名を点けられたことが忌々しくて、二十日過ぎ頃の梅の花盛りに、
「まるで色気のない無粋者のように見られて面白くない。ひとつ好色者の真似をしてやろうか」
と思い、あの玉鬘邸の藤侍従のところへ来た。中門を入ろうとすると、自分と同じような直衣姿の人影が立っていた。相手は隠れようとするのを、袖を引きとどめてみれば例のいつもこの邸に通い詰めている右大臣家の蔵人の少将なのだった。
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