竹河 その三

 六条の光源氏は、やはり万事昔に変わらず玉鬘の君を家族の一人と考えて、亡くなったあと後の遺産のことなどもいろいろ書いた遺書の中にも玉鬘の君を実子の中宮の次に書き加えていた。それで夕霧の右大臣などはかえって特に遺言に沿うように気遣い、これという折々にはご機嫌伺に訪ねるのだった。


 男君たちは元服などして、それぞれ成人したので、父大臣が亡くなったあとは頼りなく悲しいこともあったが、自然に自分の力できっと一人前になることだろう。それより姫君たちをどういうふうに縁付けたものかと玉鬘の君は心を悩ませている。


 帝にもぜひとも姫君を宮仕えさせたいと切望していることを髭黒の太政大臣が生前奏上していたので、姫君がもう成人したであろうと年月を数えて、帝より入内の勧めがしきりに来たが、後宮では明石の中宮がますますただ一人寵愛をほしいままにしているその威勢に気圧されて、誰も皆顔色なしというありさまのようだ。そんなところへ今頃押しかけて末席に連なり、はるかかなたから中宮ににらまれたりするのも厄介なことだし、また他の妃たちより劣ったみじめなありさまでいるのを見せつけたれるのもこれまた切ないことだろうと玉鬘はあれこれお思案して迷っているのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る