竹河 その二

 玉鬘の尚侍と亡き髭黒の太政大臣との間には男三人、女二人の子供が生まれた。


 父大臣はそれぞれ立派に育てあげようというつもりで月日の経つのも待ち遠しく思っているうちにあっけなく亡くなってしまった。


 すべては夢のようで、一日も早くと急いでいた姫君の宮仕えもそのままになってしまった。


 人の心というものはときの権勢にばかりおもねるものだからあれほど勢い盛んに栄えていた髭黒の太政大臣の亡くなったあとは、秘蔵の宝物とか、領していた方々の荘園など、そうしたものはもとのままだったが、一家全体のおおよその様子はすっかり変わってしまい、邸の内もひっそりと寂しくなっていく。


 玉鬘の君の近親には大勢の人々が世に栄えているが、なまじ身分の高い人々の間柄ではもともとあまり親しくなかった上に、亡き大臣が少し情味に欠け、気分にむらの多い性格で、人に煙たがれていたせいか、玉鬘の君も誰ともそう親しい付き合いはできなかったのだ。

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