匂宮 その九
「母の女三の宮は明け暮れお勤行にお励みのようだけれど、根が頼りなくておっとりしていらっしゃる。そんなたかの知れた女人の発心くらいではとても修行の上、この世の煩悩をきっぱり断ち切って極楽の蓮の上に往生することは難しいだろう。女には五つの障りがあると仏教では教えているが、それを母宮おひとりで除かれるのも心もとないことだし、自分が母宮の仏道修行の助けをして、どうせならせめて来世だけでも安らかに往生していただきたいものだ」
と考える。
「あのお亡くなりになったという相手の方も当時の罪の苦しさに悶えながらあの世でも煩悩が断ち切れないで迷っていらっしゃるのではないだろうか」
などと推量すると、あの世へ行ってでも会いたい気持ちになる。
元服は気の進まなかったのだが、辞退しきれずにした。その後はますます世間から大切に遇されているものの、目も眩むほどきらびやかな自身の栄達も一向にうれしくなく、鬱々と沈み込んでいるのだった。
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