第二部

匂宮

匂宮 その一

 光源氏が亡くなったあとには、あの輝かしい姿や世評の栄光を受け継ぐような人はたくさんの子孫の中にもなかなかいなかった。退位した冷泉院のことを子孫としてあれこれ言うのは畏れ多いことだ。


 今の帝と明石の中宮の間に生まれた三の宮とこの人と同じ六条の院で育った女三の宮の若君と、この二人がそれぞれに気高く美しいという評判だが、目にもまばゆいほどの美貌ではないようだ。ただ世間の普通の人としては立派で気品も高くて、あでやかな美しさに加えて光源氏の子孫だということから人々の尊敬がこの上なく大切に扱っているありさまもあの昔の若かった日の光源氏の素晴らしい人気や威勢よりも幾分勝っているほどなのだ。一つにはそのせいもあって、二人がこの上なく立派に見えるのだった。


 三の宮は紫の上が特に愛し、可愛がって育てたので今も二条の院に住んでいる。一の宮のことは東宮という貴い重々しい身分の人として帝も明石の中宮も特別に扱うが、その一方で二人とも三の宮を格別に可愛がり大切にしている。そのため側に置きたくて宮中に住まわせているのだが、当人はやはり気楽な二条の院のほうが居心地がいいと思っているのだった。

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