幻 その二十七

 十一月は五節などと言って世間がなんとなく浮きだっているころに夕霧の若君たちが童殿上して、その挨拶のために光源氏のところに父に連れられてきた。同じくらいの歳頃で二人ともとても可愛らしい姿をしている。


 叔父である頭の中将、蔵人の少将なども神膳を奉仕する小忌の役なので、青摺の小忌衣を着たいかにもさわやかな姿で皆若君たちにつき従いながら一緒に来ている。何の屈託もなさそうな若い人たちの様子を目にすると、光源氏はその昔、日陰の蔓を挿頭にかけた舞姫に恋心を妖しくときめかせた五節の日のことを思い出すのだろう。




 宮人は豊明にいそぐ今日

 日かげも知らで暮らしつるかな




 と詠むのだった。

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