幻 その二十一
「お亡くなりになったのはつい昨日今日のような気がいたしますうちに一周忌もだんだん近づいてまいりました。法事のことはどういうふうになさるおつもりでいらっしゃいますか」
と言うと、
「何も世間並み以上の大げさなことは考えていない。紫の上が前々から志して作っておかれた極楽の曼陀羅などをこの際供養するのがいいだろう。紫の上の発願で書かせた経などもたくさんあったが、それは例の僧都が皆その発願の趣旨を詳しく聞いておいたからそうだから、その他にまたそれ以上にしなければならないことがあればやはりあの僧都に聞いて言う通りに営むのがいいだろう」
などと言う。夕霧は、
「こうした功徳を生前から特に心がけておおきになりましたのは、後生安楽のために頼もしくも思われますが、この世ではご縁が薄くて短い寿命の上、形見といえるような子をお残しにならなかったのが何より残念なことです」
と言うのだった。
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