御法 その二十七
前大臣は弔問にも時機を外さないよく気の付く人柄なので、このようにこの世に二人とはいなかった紫の上のような人がはかなく亡くなってしまったことを残念にも悲しくも思ってねんごろに心から度々お見舞いを申し上げた。
昔妹の葵の上が亡くなったのもちょうどこの季節だったと思い出すと、とても悲しくて、
「あの時、葵の上を哀惜なさった人々もあれから何とたくさん亡くなったことよ。人に後れて生き残り、人に先立って死んでゆくといったところで吐かないこの世にどれほどの差があるだろうか」
などとしんみりとしたもの悲しい夕暮に物思いに沈んでいる。折から空の景色も悲しみを誘うような風情なので、子息の蔵人の少将を使いにして光源氏に手紙を差し上げる。しみじみと思いのこもった弔問の言葉を細やかに書いて、その端に、
いにしへの秋さへ今の心地して
ぬれにし袖に露ぞおきそふ
と書きつけた。その返事に、光源氏は、
露けさはむかし今ともおもほえず
おほかた秋の夜こそつらけれ
と書くのだった。
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