夕霧 その一〇八
手紙を度々やって、迎えの使者も差し向けたが、雲居の雁からは返事もない。こんなふうに頑固で軽々しいことをする妻なのだと腹立たしく思うが、舅の大臣の手前もあるので日が暮れてから自分で迎えに出向いた。
「北の方は寝殿にお出かけでいらっしゃいます」
と女房がいい、いつも里帰りに使う部屋には年かさの女房たちだけが控えていた。若君たちは乳母と一緒にいる。
夕霧は、
「今更若い者どうしのようなお付き合いをなさるではないか。こういう小さい子たちをあちらこちらに放っておかれたまま寝殿へひとりお遊びに行くなどなんたることです。私にはふさわしくない気性だとはずっと前からよくわかっていたけれど、前世からの宿縁なのか昔から忘れられない人として愛してきた上、今となってはこうして大勢手のかかる子供達も生まれ、可愛く育っていることだしお互いに別れるなどということはあり得ないと信じていたのに。取るに足らないつまらないことでこんな態度をとってもよいものですか」
とひどくなじり、恨み言を言うのだった。
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