夕霧 その七十八

 光源氏は、



「朱雀院からもご弔問なさることだろう。あの女二の宮はどんなにお悲しみになっていらっしゃることか。前に聞いていたよりは最近何かにつけて見聞きするところではあの更衣はなかなか立派なよくできたお人のようではないか。世間一般から見てもなくなったのは惜しいことだった。もっとこのまま生きていてほしい人がこうして亡くなっていくとは。朱雀院も急なことでひどく驚いていらっしゃったそうだ。あの女二の宮はここにいらっしゃる女三の尼宮についで、朱雀院のお可愛がりになっていらっしゃった方のようだ。きっとお人柄も優れていらっしゃるのだろうね」



 と言う。



「女二の宮のお人柄はどういうお方か、私は存じ上げません。御息所は性質もご態度も難のないお人でございました。親しくお打ち解けくださったわけではありませんが、何かのちょっとしたついでにも人の嗜みというものは自然によくわかるものでございます」



 と言い、女二の宮のことにはちらりともふれず、まったく素知らぬふりをしているのだった。

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